肉バルの先駆け店、今度は卵料理カフェ 東京・御徒町
卵メニューに特化したカフェ、「egg baby cafe」(エッグ ベイビー カフェ、東京・台東)が盛況だ。オープンは2018年年12月で、御徒町駅南口から秋葉原方向に歩いて1分の場所に立地。94席の店舗ながら月商は900万円。まだ伸びしろを感じる勢いがある。
ランチ、ディナーと、卵を使ったメニューを提供する。生パスタを使った「エッグベイビーカルボナーラwith自家製パン」(税別1千円)や、具だくさんの「タマゴとファーマー野菜のパワーサラダwith自家製パン」(同)など、どれも卵が主役の魅力的なメニューばかりだ。
筆者が同店のアイコン的なメニューと感じたのが、とろりと黄身が流れる「半熟タマゴのサンドイッチwithフレンチフライ」(900円)だ。2個の半熟卵を、ふわふわの自家製パンで挟み、味付けは刻んだベーコンと崩したゆで卵が入ったオリジナルマヨネーズだ。かぶりつくとやさしくてどこか懐かしい味が口いっぱいに広がる。
木製素材とアンティーク調の調度品で統一した店舗デザインも目を引く。JR山手線の高架下にニューヨークの下町、ブルックリンあたりの店ができたようだ。運営するのは、エッジオブクリフ&コムレイド(東京・中央)だ。
針生真社長は12年に現在の「肉バル」業態の先駆けともいえる「東京ブッチャーズ」を神田駅西口に出店。アンティークの調度品と古材を使った店内で提供される赤身の塊肉に多くのお客が押し寄せる人気店だ。この店がなければ、現在まで続くバルブームは違ったものになっていただろうと筆者は感じている。
また、egg baby cafeの横には、クラフトビールの醸造所を併設した「東京ブッチャーズwith OKACHI Beer Lab」が出店する。2店舗を合わせた敷地面積は約400平方メートル。この規模感は御徒町の雰囲気を一新させる力を感じた。ここで作られるクラフトビールの一部はegg baby cafeでも飲める。
実はもう一つ、"バズ"っているメニューがある。それが「エッグベイビープリン」(450円)。いわゆるしっかりとした硬めのプリンで、苦みのあるカラメルと、絹のようになめらかな舌触りは、丁寧な下ごしらえを感じる昭和の味だ。添えられた生クリームはもちろん自店仕立てだ。
ステンレス製の器に盛られた姿と手作りの味が交流サイト(SNS)で話題になり、平日で80食、週末には120~180食も出るという。デザートは午後4時以降での提供となる。
同社では店舗デザインから、資材の買い付け、地域性を考えたメニュー開発まで自社で行い、革新的かつ、心に響く店舗パケージを完成させている。そのノウハウを生かした開業支援での実績も多い。針生社長は「御徒町に出店したのは挑戦だが、いままで代官山や恵比寿に向かっていた客層を呼び込み、新しい大人のスポットに育てたい」と話す。新しい東京の名所ができつつある。
(フードジャーナリスト 鈴木桂水)
フードジャーナリスト・食材プロデューサー。美味しいお店から繁盛店まで、飲食業界を幅広く取材。"美味しい料理のその前"が知りたくて、一次生産者へ興味が尽きず産地巡りの日々。取材で出会った産品の販路アドバイスも行う。
[日経MJ 2019年5月24日付]
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