アトピー新薬を記者が使う 生活は改善も高い注射代抗体でかゆみ・炎症抑える

注射は2週間に1回のペースで打つ。2、3回投与してもらったころから、かさかさで乾燥すると粉を吹いていた皮膚に張りが出てきた。体全身に脂を塗ってもらった印象だ。ひっかき傷もなくなり、顔や首から赤みも減った。

副作用として結膜炎になることがあると聞かされていた。注射後2、3日してから目やまぶたが熱くなることがある。

アトピー性皮膚炎の治療効果はいま「TARC」と呼ぶ血液検査の値で評価する。治療開始当初、3000を超えていた値は700を切るまで下がった。重症な状態から、見た目アトピー性皮膚炎かどうかわからないレベルに改善した。

もちろんかゆみが完全になくなったわけではない。長年の癖になっているのかもしれないが、気がつくと頭や顔、首に手がいってこすってしまうこともよくある。

日本医科大学の佐伯秀久教授は「(デュピクセントは)よく効くが、基本的には対症療法。アトピー性皮膚炎の治療では皮膚のよい状態をどう保つかが大切な点に変わりない」と話す。

2週に1回の注射と併用し顔や体には「プロトピック」という免疫抑制軟こうを毎日塗っている。洗顔や入浴の後、保湿剤による徹底したスキンケアも欠かせない。これからもアトピー性皮膚炎と上手につきあっていく人生は続きそうだ。

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「1回8万円」 薬代が課題

「デュピクセント」の治療を受けていてやはり驚くのが薬代だ。現在の薬価は1回の投与で8万1640円。単純計算すると年間で約210万円になる。もちろん公的医療保険でカバーされるため、自己負担はその一部だが、それでも経験したことのない金額を毎回、病院の会計で支払う。NTT東日本関東病院の五十嵐皮膚科部長によると「費用の面から治療をためらうケースもたくさんある」という。

バイオ技術の進展でがん治療薬「オプジーボ」のように効果が画期的である一方、治療費が高額になるケースが増えている。国民皆保険で医療が守られている日本では、高額医療は国の財政問題にも跳ね返ってくる。デュピクセントは今年3月、重症の気管支ぜんそくに対し、適用拡大になった。今後、患者数が増えれば「費用対効果」がクローズアップされるかもしれない。

(編集委員 矢野寿彦)

[日本経済新聞夕刊2019年5月15日付]

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