セールス禁止で業績を回復 これが地域金融の生きる道神戸大学教授 家森信善

もはや地域金融には職場としての魅力はないのだろうか。確かに、浪川攻『銀行員はどう生きるか』(講談社現代新書・18年)や森本紀行『銀行員大失業時代』(小学館新書・17年)は、人口減少やフィンテックによって金融環境が抜本的に変わってしまい、変われない銀行は滅び、変われない銀行員たちは職場を失うことを指摘している。しかし、同時にこれらの書が異口同音に指摘しているのは、先端的な情報技術(IT)でも代替できないこと、すなわち、顧客とともに悩み考え伴走していくことができる人にとっては、地域金融はやりがいと可能性のある職場だという点だ。

地方創生に不可欠

地域金融の道に入るのか、留(とど)まるのかを迷う若者には、東京ウォーカー編集部『かわるに、かあらん 高知県地方創生プロジェクトにかけた男たち』(KADOKAWA・18年)をお薦めしたい。地域金融機関と政府系ファンドである地域経済活性化支援機構が連携して、地域の様々な人たちを巻き込んで、高知県ものべがわ流域エリアの活性化に取り組んだ事例がマンガで描かれている。

金融だけでは地方創生はできないのはもちろんであるが、金融がなくては地方創生は実現できない。地方創生には地域連携のハブを担う人材が必要だが、地域金融機関は、そうした人材を育成し、そうした人が活躍できる「やりがいの大きな」職場だ。

地域のために働きたいという思いを持つ若者は多く、そうした人が多く集まれば地域金融機関としての力は高まる。人材流出や採用難は、金融機関経営者にとって、本来の役割を果たせていないという「不合格の」成績表だと認識すべきなのである。

[日本経済新聞朝刊2019年5月11日付]

捨てられる銀行3 未来の金融 「計測できない世界」を読む (講談社現代新書)

著者 : 橋本 卓典
出版 : 講談社
価格 : 928円 (税込み)

よみがえる金融―――協同組織金融機関の未来

著者 : 新田 信行
出版 : ダイヤモンド社
価格 : 1,728円 (税込み)

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