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目玉はオイルすし 山形の著名イタリアンが銀座で挑戦

日経MJ

2019/5/10付

ホール、キッチンを問わず総力戦でお客に対応する

「令和は飲食店にとって苦境の時代になる。そのために店を改装した」――。そう話すのは山形県鶴岡市にあるイタリアンレストラン「アル・ケッチァーノ」のオーナー、奥田政行シェフだ。奥田シェフと言えば、絶滅しかけた地元食材を掘り起こし、モダンなイタリア料理にすることで、世界的に注目されている。

現在は鶴岡市だけでなく、日本各地に直営店やプロデュース店を出店し、日本各地の埋もれた食材を加工食品にするなど、1次産業を積極的に支援し、幅広く活躍。グループを束ねる「オール・ケッチァーノ」の代表取締役も務める。

その奥田シェフが働き方改革時代の人手不足の対策として打った手が、効率化を優先した店舗の改装だ。最初の一手として東京・銀座にある直営店「ヤマガタ サンダンデロ」を選び、4月下旬にリニューアルオープンした。同店は約100平方メートルで月商は1千万円と好調だ。ディナーは6千円から。

庄内から届く季節の恵みが皿を彩る

改装のポイントは店舗のファサードに面したカウンターだ。これまでは物販や自身の著作物を販売していたが、改装後はカウンターで前菜などを盛り付けられるキッチンにした。お客の状態がわかる店先でキッチンスタッフに作業をさせることで、裏方に回りがちなキッチンのスタッフにも積極的に接客をさせる、という考えだ。

「少ない人数で店を回す場合、ホール、キッチンと分けて仕事をすると効率が悪い。忙しい時は総力戦で接客することで、効率を上げつつ、お客様の待ち時間を減らすことで満足度も高めたい」と、奥田シェフは改装の意図を話す。

改装後の店内を視察したが、以前に比べて、キッチンスタッフが目立って接客をしており、料理の提供もスムーズだった。接客しても違和感がないように、キッチンスタッフは「コックコート」ではなく、シャツ仕立ての調理服を着ていたいのも印象に残った。

6月には奥田シェフが考案した「オイル寿司(すし)」もこのカウンターから提供する。オイル寿司とは従来のにぎりずしに、煮きり醤油(しょうゆ)などの代わりに、塩とオリーブオイルやアボカドオイルなど、香りのある食用油をはけで塗って提供する新しい考えの寿司だ。筆者は白身など淡泊な魚を醤油で食べると、醤油の味が勝ってしまい、塩は味覚を“点”で感じるので、いまひとつだと思っていた。

オイル寿司なら白身でも赤身でも、素材の風味にあわせて、オイルと塩を組み合わせるので素材の持ち味を生かしつつ、風味を添えている。インバウンド(訪日外国人)対策のメニューとしても注目だ。その他のメニューは今回のリニューアルに合わせて、より一層値ごろ感のあるコースを用意した。

慢性的な人手不足に悩まされ続けている飲食業界にとって、奥田シェフの店舗リニューアル計画が参考になると感じた。

(フードジャーナリスト 鈴木桂水)

鈴木桂水(すずき・けいすい)
フードジャーナリスト・食材プロデューサー。美味しいお店から繁盛店まで、飲食業界を幅広く取材。“美味しい料理のその前”が知りたくて、一次生産者へ興味が尽きず産地巡りの日々。取材で出会った産品の販路アドバイスも行う。

[日経MJ 2019年5月10日付]

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