30人の世界的著名シェフが腕をふるう 東京・日本橋
ミシュラン「40つ星」レストラン――。そんな夢のような店が4月、東京・日本橋に開店した。高級飲食店を展開するグラナダ(東京・中央)が運営する「COOK JAPAN PROJECT」(同)だ。世界各国から集まった約30人の著名シェフが数日おきに交代してコース料理を提供する。日本の食材を使った同店限定の料理を提供し、舌の肥えた美食家をうならせている。
40つ星とは来日するシェフが持つ合計の星の数。例えば、開店から3日間、ランチとディナーを担当したヤニック・アレノ氏はフランスで唯一、ミシュラン三つ星のレストランを2店舗展開するすご腕だ。このほかオランダのヤコブ・ヤン・ボエルマ氏や、スペインのダニ・ガルシア氏など各国の三つ星シェフが名を連ねる。
各シェフは3~6日間限定でコース料理を振る舞う。メニューはこの店のためだけに考案したオリジナル。日本の食材や調味料を使ってこの店だけのレシピを考えてもらう。例えばアレノ氏は有明海産のノリを使ったパイや、静岡県産のキャビアを添えたチーズスフレなど和のテイストを取り入れた料理を提案した。盛りつけの皿やワイングラスも全て国産。和と洋の融合が楽しめる趣向になっている。
来日前にはテレビ会議で食材やレシピの相談をするほか、開店前の数日間はシェフの目利きで食材の調達も行う。「豊洲市場に魚を買い付けに行ったり、デパ地下に日本の調味料を買いに行ったりしている」(グラナダ)。4日から6日間ディナーを提供するガルシア氏は、同社の下山雄司社長と長崎県の漁港に赴き、カキなどの魚介類を調達する予定だという。
これだけ手間がかかっているだけにコースは料理のみで2万5千円からと高額だ。それでも下山社長は「普通ならありえないメンバー。来て損はない」と強調する。
予約状況も好調だ。全シェフのコースを予約している客もいるほか、一度来店した客がその場で次のシェフの予約を入れる場合もあるという。「海外に行く手間と費用を考えれば、お得と感じている人もいるのではないか」(同)
一流の料理人をここまで集められた理由には、日本への関心の高まりがある。日本食の人気が高まっているほか、2020年の東京五輪をきっかけに注目が高まっている。下山社長は「今の日本を知りたいという海外シェフが増えている」と話す。事実、ガルシア氏は本場のすしを楽しみに来日を決めたそうだ。
現在も各国の一流料理人と交渉中で、今後も来日するシェフが増える可能性があるという。料理人や調理師などを集めた講演会や講習会を開く予定もある。
それぞれの調理には、グラナダのスタッフも携わる。一流のシェフとのコラボレーションで「自前の料理人も鍛えられるはずだ」(下山社長)と期待を寄せる。
(平嶋健人)
[日経MJ 2019年5月1日付]
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