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古美術商から研究者へ 恩師に背中押され海外で30年 兵庫県立美術館館長 蓑豊氏

2019/5/4付 日本経済新聞 朝刊

芸術の尊さを、いかに易しく、かつ美しい言葉で伝えるか。国内外の恩師や著書に教えられた。

井上靖さんは『美しきものとの出会い』で主に日本の文化財について書いていますが、その審美眼と品格ある文章に引き込まれます。東洋学者の神田喜一郎先生の著書『敦煌學五十年』は古書店で見かけるとすぐ買ってしまうので、何冊も手元にある愛読書。難しい専門書ではなくエッセー集で、先生の学問への情熱が伝わります。

司馬遼太郎さんの『21世紀に生きる君たちへ』は子供や若者への期待と優しいまなざしに満ちた本。美術館を運営する際の指針を与えてくれました。

金沢21世紀美術館の館長を打診されたとき、市長にこうお願いしました。目玉となる高額な美術品を買うのもよいが、金沢の未来である市内の小中学生約4万人を無料で招きたい。これをオープンから3カ月でやりました。すると彼らが今度は親を連れて来る。リピーターがとても多い美術館となりました。小さいころに感動した体験は一生忘れない。そんな感動体験がある子たちが、司馬さんがいう次代の「かがやかしいにない手」になると信じています。

(聞き手は編集委員 窪田直子)

[日本経済新聞朝刊2019年5月4日付]

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