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若いがん患者の勉強・仕事 行政や企業で支援の動き 病院で授業/治療費に補助

2019/4/24付 日本経済新聞 夕刊

「AYA世代」と呼ばれる10~30代の若いがん患者に対する行政や企業の支援が広がり始めた。進学、就職、結婚、出産など人生で重要なイベントを迎える時期だけに、治療と両立できるようにする支援策が必要との判断からだ。厚生労働省は小児がん治療の拠点病院に教育支援などを求めた。企業でも有給休暇や勤務時間の仕組みを見直す動きが出ている。

AYA世代は思春期(Adolescent)と若年成人(Young Adult)から作られた言葉。小児から成人への移行期にあたる主に15~39歳の患者を指す。国立がん研究センターによると、この世代のがん発症者は年間に約2万人と推計される。成長・発達段階でがんを発症すると身体的な負担だけでなく、進学、就職、結婚といった人生で重要なイベントと治療を両立する負担も重い。

厚労省は2018年7月、AYA世代の患者には就労や教育、心理的なケアなどへの対策が必要との考えから、地域で子供のがん診療の中心となる「小児がん拠点病院」の指定要件を見直し、患者への相談支援の実施などを追加した。

その拠点病院の一つである東京都立小児総合医療センター(東京都府中市)は教育に力を入れている。

入院中の小中学生は病院内にある特別支援学校の分教室で授業を受けられる。中学生には9人の常勤教員が9教科を教える。病院が治療方針を検討する週に1度の会議には専門の教育コーディネーターが参加し、主治医に「体育の授業でどこまで運動させてよいか」といった相談をするので、患者の病状にあわせた授業ができるという。

退院して通院治療に切り替わり、患者が元の学校に戻る際には、復学先の学校側と話し合う会議を開く。容体が悪くなる兆候や学校生活での対策など注意点を学校側に伝える。

分教室で対応できない高校生への支援には課題も残る。教育コーディネーターの古畑晴美さんは「高校生は1年近い入院治療で退学を余儀なくされることもある」と話す。ただ私立高校では復学を約束される例も増えているという。

経済的な蓄えが少ないことも多い若年成人にとっては、仕事を続けながら治療を受けることができるかどうかも大きな問題だ。

働きながら大腸がん治療を受けた朝日航洋の渡部さん(右)

「30歳代では経済的な余裕もなく、通院しながら働ける抗がん剤を探した」。ヘリコプター輸送などの事業を手がける朝日航洋(東京・江東)に勤める渡部俊さんは12年、30歳の時に大腸がんと診断された。

手術後に医師に勧められた抗がん剤は副作用が重いので、欠勤が多く収入が大きく減ってしまう。そこで、比較的副作用が軽く、仕事ができる薬を探した。

治療と仕事を両立できるよう社内制度を工夫する企業は増えてきた。伊藤忠商事が患者に先進医療費を補償するほか、テルモは勤務時間を最大で2時間ずらせる時差勤務などを取り入れた。順天堂大学医学部の遠藤源樹准教授は「これまで患者側から辞職を申し出ることが多かったが、変わり始めている」と話す。

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