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私の課長時代

ケータイ撤退、人切らず実行 部下の腹落ち大切に 三菱電機社長 杉山武史氏(下)

2019/4/23付 日本経済新聞 朝刊

電動パワステを設計していた当時は「部下から『もっと優しい言葉で言ってよ』と思われていたかも」

■主力事業の設計体制を見直す。

2000年に新しい電動パワーステアリングシステムの開発に乗り出したとき、将来の中核事業になるという確信がありました。リーダーとして変えたいこともあり、「俺がやる」と宣言して専門の設計開発チームを立ち上げました。

電動パワステとは運転手のハンドル操作を補助し「曲がる」機能を担う重要なシステムです。これにより車の燃費は3~5%向上すると言われています。1988年に世界で初めて量産化に成功しましたが、他社の追随も早かったのです。

■次世代に伝わる設計書作りにこだわった。

設計段階で寸法などをどんな根拠で決めたのかという情報を書かず、後で設計書を見て理解に苦しむことがしばしばありました。

寸法などが書かれていれば設計書としての最低限の役割は果たします。ただ、主力製品として長期に改良していくことを考えれば、先輩たちが記した根拠や手順といった情報こそがよりどころになります。根拠が同じなら新しい材料への切り替えもしやすいのです。

そのため、設計に当たり手順や根拠を明確に、全てを書くようチームに求めました。設計作業だけでも大変なのに、詳細に記録を残すのは大変です。当時は高い目標を求め、叱咤(しった)激励のうち叱咤ばかりだったかもしれません。

今の仕事が自動車業界の主流を作り、当社の主力製品にするのだという共通認識がありました。目の前の負担は増えてもその設計書が将来の助けになることを説き続けた結果、チームはその重要性を認識してまとまることができました。

開発した新世代の電動パワステは04年にメルセデス・ベンツAクラスに採用されました。全員が「腹落ち」すると、チームは力を発揮すると痛感しました。

■携帯電話事業のリストラに直面する。

08年、携帯電話事業を手掛けるモバイルターミナル製作所長のとき、携帯電話事業からの撤退が決まりました。事業トップとして非常につらい時期でした。

人を切ることだけは絶対にしたくありませんでした。携帯電話の開発で磨いた通信技術は通信インフラや車載機器にも応用できます。これまでとは違った形で社会に貢献できるのではないか。一人ひとりと議論を重ねて、最終的には配置転換するだけで事業撤退ができました。

部下が腹落ちして仕事してもらえるように努めることを大切にしています。

〈あのころ〉
日本の電機大手にとって2000年前後は事業の絞り込みを進めた時期だった。日本勢が競争力を持った半導体メモリーのDRAM事業は価格競争に陥り、再編統合が進んだ。その中で三菱電機は独自に電動パワステなど主力事業の強化に取り組んだ。

[日本経済新聞朝刊 2019年4月23日付]

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