藤井聡太七段、王座戦挑戦者への道 本戦開幕迫る
第67期将棋王座戦の本戦トーナメントが近く開幕する。昨年ベスト4だった藤井聡太七段(16)の最年少挑戦記録更新はなるか。斎藤慎太郎王座(26)への挑戦権をかけた熱い戦いが始まる。
抽選の結果、組み合わせは表の通りとなった。トーナメント表を見た斎藤王座は「どこもきつい組み合わせ。全員が挑戦者候補だと改めて感じた」と語る。
中でも、激戦区とみるのが両端のブロック(4人一組)だ。「左端は二冠2人に久保九段、横山六段。右端は名人に前王座(中村七段)、前王位(菅井七段)、深浦九段。それぞれ1人しか勝ち上がってこないのはすごい」。右から2番目のブロックも「叡王戦七番勝負を戦っている2人(高見叡王・永瀬七段)に、王座挑戦経験のある丸山九段、山崎八段。どこも特色のあるブロックで面白い」。
最も注目を集めそうなのが、左から2番目のブロック。王座通算24期で名誉王座の資格を有する羽生九段と、藤井七段をはじめとする若手3人が並んだ。
藤井七段「じっくり最善を」
藤井七段は初出場となった昨年の王座戦でベスト4まで進み、デビュー以来最もタイトル戦に近づいた。その実績でシード権を得て、今年は本戦からの出場。藤井七段は昨年について「トップ棋士と戦う機会が得られて、自分に足りないものをつかめた部分もある。そういう経験ができたのは収穫」と振り返る。
王座戦は持ち時間各5時間と長丁場の棋戦。藤井七段は棋戦との相性について「持ち時間3~4時間より、5~6時間の棋戦の方が結果が出ているのは事実」と自己分析する。今年も「じっくり考えて最善を目指す将棋が指せれば」。
初戦は昨年度の勝数1位の若手、佐々木五段。「(佐々木五段は)今一番勝っている若手。過去2戦(1勝1敗)も苦しめられた大変な強敵」と気を引き締める。
斎藤王座は、藤井七段について「プロ間での評価は年々高まっている」と明かす。「昨年度、連覇した朝日杯での活躍はもちろん、段位が上がり相手のレベルも上がった中での勝率1位は非常に価値が高い。トッププロの仲間入りを果たしたといっていい。タイトル挑戦の期待がかかって当然の成績」。王座戦との相性についても「時間を残し過ぎず使い過ぎず、5時間の将棋を得意にしている印象がある」と分析する。
羽生九段も有力
もちろん、王座戦と抜群の相性を誇り、タイトル獲得通算100期の大記録に王手をかけている羽生九段も有力だ。斎藤王座は羽生九段について「NHK杯で優勝、A級順位戦でも最後まで名人挑戦を争った。無冠となった竜王戦も、3勝4敗と接戦だった。調子を落としている印象は全くない」と警戒感を隠さない。
なお、今期から考慮時間の計測にチェスクロックが導入される。持ち時間は各5時間で変わらないが、従来切り捨てられていた1分未満の考慮時間がカウントされるため、実質的に30分以上持ち時間が減ったと感じる棋士が多いという。
終盤に備えてどの程度の時間を残しておくかなど「戦い方が変わるかもしれない。秋の五番勝負をどう戦うか、自分もこれから考えていきたい」と斎藤王座は話す。
興味が尽きないトーナメントの顔ぶれが出そろった。5月10日の中村七段ー菅井七段戦が開幕局となる予定だ。
(柏崎海一郎)
[日本経済新聞夕刊2019年4月23日付]
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。