冷え冷え麺に熱々の甘辛あん 茨城のスタミナラーメン
茨城県中央部の水戸市、ひたちなか市などには「スタミナラーメン」と呼ぶご当地ラーメンがある。上に豚レバーやカボチャなどの野菜が入ったしょうゆベースの甘辛いあんをのせたもので、地元の人々に愛され続けている。
水戸市で「スタミナラーメンといえばここ」ということで訪れたのが茨城スタミナラーメン松五郎。行列の絶えない人気店で、遠方から訪れる客も少なくない。
スタミナラーメンには、ゆでた麺を冷水でしめて熱々のあんをかける冷やしと、スープ入りのラーメンにあんがのったホットがある。一般のラーメンをホットと言わないのに、温かいスタミナラーメンをわざわざホットと呼ぶのは、逆にそれだけ冷やしが浸透していることの表れだ。
それならぜひと冷やしを食べてみた。店主の池田睦さん(51)はレバーやカボチャなどを油通ししていく。ニンジンやニラ、キャベツなども入れる。具材が混ざったところで、甘辛いたれで味付けて一味トウガラシをまぶし、これにとろみを加えるとあんのできあがりだ。
麺は特注の中太ストレート麺。冷たい麺にあんがのった冷やしを一口食べると、これまで味わったことのない新食感。あんの味は濃いめなのにもちもちの麺と合わせるとくどさを感じない。しかも食べ進むたびに違う具材を楽しめる。やみつきになる人が多いのも分かる気がした。
「うちのスタミナラーメンでレバーを食べられるようになった人もいる」と池田さんは話す。開店当初は冷やし中心だったが、ホット用に新たにスープを開発したら、ホットも人気メニューに育った。
スタミナラーメン発祥の地、ひたちなか市では新ご当地ラーメンとして「幸福(しあわせ)の黄色いスタミナ」が2016年に登場した。商工会議所と地元飲食店組合が連携して開発した。新ご当地ラーメン研究会会長で大進を営む川崎正悟さん(70)は「できあがるのに3年ぐらいかかった」と話す。
スタミナラーメンにカレーを組み合わせたもので、トッピングには同市が加工高日本一のタコと地元産のゆで卵がのる。常陸牛のすじ肉も使われている。同市には大企業の工場が多く、食堂でカレーが人気だったことにちなんだ。
満福店長の尾亦通さん(64)は客の要望に応じてカレーの辛さを変える。「辛さの感じ方は人それぞれなので、いかに受け入れてもらうか考えている」と新メニューの浸透に力を入れている。チーズをお好みで入れられるように提供している。残ったスープにご飯を入れて食べるのもおすすめという。
スタミナラーメンは1970年代にJR勝田駅(茨城県ひたちなか市)前の中華料理店で松五郎の先代が提供したのが始まりとされる。周囲に学校が多く、学生に腹持ちが良く栄養価の高い食事を取ってほしいとの思いから開発されたそうだ。麺は半玉刻みで増量できるので好みの量を簡単に注文できる。水戸・松五郎の池田さんは先代の下でスタミナラーメン作りを学んだ。松五郎の初代店主が今は亡き先代で、池田さんは2代目だ。ひたちなか発祥のメニューが水戸にも広がったのは同店の影響が大きい。
(水戸支局長 伊東義章)
[日本経済新聞夕刊2019年4月18日付]
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