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災害時の非常食、乳幼児や高齢者は2週間分の備えを 支援物資の栄養に偏り

2019/4/17付 日本経済新聞 夕刊

東日本大震災をきっかけに、日本栄養士会は要配慮者向けの食料を避難所に届ける「特殊栄養食品ステーション」を被災地で設置している。16年の熊本地震の時には県庁などに複数設け、アレルギー対応食や高齢者向けのおかゆを栄養士チームが届け、食べ方など個別の支援をした。この仕組みによって熊本ではアレルギーの事故がなかったといわれる。チームリーダーも務める笠岡さんは「ステーションの仕組みがあることを、要配慮者自身と自治体の担当者にもぜひ知ってほしい」と訴える。

18年8月には、厚生労働省令が改正され乳幼児向けの液体ミルクが認められた。すでに江崎グリコと明治が商品化している。常温保存ができ、清潔な水も必要ないため、赤ちゃんを抱えた避難者には朗報だ。

要配慮者には外国人もいる。イスラム教の戒律に沿う豚肉を使わない「ハラル認証」を取得した食品も増えている。災害食大手の尾西食品(東京・港)はハラル対応に加え、小麦、そば、卵など27種類の特定原材料を使わないアレルギー対応食をそろえている。同社の小林昭彦取締役経営企画部長は「災害直後のパニック状態では食品を仕分けして配布することは困難。だからこそ、誰でも安心して食べられる災害食を増やしていきたい」と話す。

災害規模が大きくなるほど自分で備える自助が大事になる。日本災害食学会の別府茂副会長は「災害による直接死を防ぐ対策はわかりやすい。しかし、災害関連死の対策を考えておかないと『助かってよかった』とは言えない。防災には、生き残った後の食生活も含まれる」と指摘する。

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■避難生活 公助に限界

政府が想定する最悪のシナリオでは、首都直下地震の避難者数は東日本大震災の15倍の720万人。南海トラフ地震は950万人で、日本人の13人に1人が避難生活を強いられる。自治体は災害食の備蓄を強化しているが公的支援には限界がある。だからこそ自助が大事になる。

政府は3月、南海トラフ地震が発生する可能性が高いとして「臨時情報」を出した際の、自治体などの防災対応の指針を公表した。津波が到達する沿岸部では1週間の避難を求めたが、注目すべき記述がある。「避難所は避難者が自ら運営し食料や生活用品は各自で準備する」

地震発生前でも1週間の食料確保が前提。健康面の2次被害は自ら防ぐ覚悟がいる。東日本大震災の際に、政府が被災地に送れた食料は最大で1日150万食だった。

(大久保潤)

[日本経済新聞夕刊2019年4月17日付]

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