非常食を無駄なく ラベル貼って量・期限「見える化」
もうすぐゴールデンウイーク。時間があるときに、普段後回しにしてしまう災害時の備えを見直してはどうか。初回は食品の備蓄について。ロスを生まない選び方や整理の仕方をおさえよう。
東日本大震災の後に広がった「ローリングストック」は普段から食べている食品を多めにそろえ、賞味期限の近いものから食べて、減った分だけ補充する備蓄法だ。被災後、自宅にとどまって被災生活を送ることを想定する。
備蓄した食品の期限切れを防ぐ方法といわれるが「やっぱり食べ切れなかった」と結局、廃棄している人もいるだろう。
最低で7日分 減ったら補充
食品ロスが生じるのは「食べ慣れない食品をそろえるから」と整理収納コンサルタントの渋川真希さんは言う。「いつ食べるかわからないから適当なもの」ではなく「小腹が空いた時に食べたいもの」を選ぶのがポイントだ。
また、「被災してつらい時に食べるものだからこそ、慣れている味が大切」と、東日本大震災で被災した経験を持つ渋川さんは助言する。
食品を上手に回転させていく秘訣は「分類とラベル管理」にある。
防災備蓄収納マスタープランナーの三島愛さんは食品は管理しやすいように、分類して収納することをすすめる。手軽さや使う頻度、賞味期限など自分がしやすい分類のルールを決めよう。購入時に賞味期限を確認し、シールに「○年○月」と日付を書いて貼れば、「何をどの順番で使えばいいかが一目でわかる」。
日付はシールやマスキングテープに手書きしても、箱や缶にマジックで書いてもいい。もちろん、「(我が家の)シリアルのように回転が早い食品は日付を書かなくてもいい」と三島さんはいう。
渋川さんはラベルに食品名と備蓄したい数を書き、減ったら補充して備蓄数を一定にしている。「リストを作って管理するより簡単」。ただ、食べた後すぐに買い物に行けないこともあるので、10日分を備蓄しているという。
奥にしまい込まず、出し入れしやすい場所に置くことが重要だ。三島さんは「量が多いものは分散してもいいが、2カ所まで」。渋川さんは「台所以外なら、他の防災用品と一緒に備蓄コーナーを作って管理を」と話す。家族全員がわかる場所に決めよう。
場所がない悩みはあるがこの際、不用品は捨てよう。仕組みができれば管理は楽になる。トイレットぺーパーや電池、薬などにも応用できる。
何をどれだけそろえればいいのか。各家庭の備蓄は、広域災害で支援物資がなかなか届かない事態を想定し、最低7日分は必要といわれる。種類や量の目安は農林水産省のインターネットサイトにある「緊急時に備えた家庭用食料品備蓄ガイド」が参考になる。家族構成、食事や調理の習慣などに合わせて「我が家のスタイル」を作り上げる。
一気にそろえると大変だが「普段から買い置きしているものや冷蔵庫と冷凍庫の分も含めて考えればいい」(三島さん)。家中の食料を総動員すればそれなりの量がある。
食べ慣れた品 ムダにならず
実際に、イメージしてみよう。まずは今、自宅にある食料で、シミュレーションしてみるといい。食品は災害時、日持ちしない順に食べていく。ライフラインが止まったら、まずは冷蔵庫の食品を。次の2~3日間は冷凍庫の食品、その後常温で保存可能な食品を食べる。
非加熱、自然解凍、賞味期限の長い食品は活用したい。冷蔵庫に常備すると助かるのは、魚肉ソーセージやハム、非加熱のウインナー、チーズ、ジャムなど、調理せずに食べられる食品だ。冷凍庫には自然解凍で食べられる冷凍食品を入れておくと便利。パンも自然解凍で食べられる。冷凍保存したご飯や、ゆでた野菜も利用できる。
カセットコンロとガスボンベなどの熱源があれば生の肉や魚なども調理できるので、日ごろから小分け冷凍しておくと役立つ。渋川さんは「冷凍庫はギュウギュウに詰める方がいい。冷凍品が保冷剤代わりになり、ドアの開閉を減らせば2~3日は冷気を保てる」と話す。
常温保存の食品はムダにならないように食べ慣れたもの、よく食卓にのぼるメニューを。湯を注いだり温めたりするインスタント食品も多いので、水と熱源は忘れずに。
(ライター 奈良 貴子)
[NIKKEIプラス1 2019年4月13日付]
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。