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教養

池上彰と黒田博樹に学生が聞く どうすれば自信持てる スペシャル対談(下)

2019/4/8付 日本経済新聞 朝刊

講演する黒田さん(左)と池上さん

ジャーナリストの池上彰さんと元プロ野球選手の黒田博樹さんによる特別講演「人生の壁を乗り越えて」の後編をお届けします。今回は若者との対話編です。高校生と大学生が、プロフェッショナルの道を極めた二人に率直な質問を寄せました。

質問 将来、起業したい。自分を追い込むにはどうすればよいか。

池上 「自らの体験でいえば、独立すれば追い込まざるを得なくなる。むしろ、『明日があるから、今日は寝ておこう』くらいの気持ちを持てることの方が大事だ」

黒田 「30歳を過ぎたころから、いつも『これが最後のマウンドだ』と思って投げ続けてきた。最後のマウンドなら目いっぱい腕も振れるし、強打者にも強い気持ちで向かっていける。そういうマインドじゃないと、この世界では生きてこられなかった」

質問 相談できる先輩の見つけ方はあるか。

池上 「会社など大きな組織では自分のことを見ている人が必ずいるものだ。この講演でも人間関係を大事にしてほしいという意味で、他の職場とのつながりを含めた『斜めの関係』の話をした。そういう人を見つけて相談をするのがいいのではないか」

黒田 「いまの若い選手たちは、他球団の選手に相談をしたり、一緒に練習をしたり、意欲的だと思う。必要な先輩がいたら、その先輩を好きになることではないか。教えてほしいことを積極的に相談をしてみることだ」

質問 自信をつけるコツはあるか。

池上 「初めから自信のある人はいないし、自信があると言い切れる人は鼻持ちならない。私は働き始めてからも自信がないままの日々だった。だから目の前の課題にコツコツと取り組んで、少しずつ自信を持てる部分を増やしていくことが大事だ」

黒田 「一試合勝っただけで自信につながるなら、一試合に負けて自信を失うこともあるはずだ。自信とは、結果を出すための裏付けや取り組んできた過程があって、初めて経験できるものだ。小さな積み重ねでも、いつか『こういうことだった』とわかる日がきて、自信につながる」

質問 日ごろの活動や情熱を生み出す原動力は何か。

池上 「記者の仕事とは、誰よりも早く他人の知らない情報を知り、伝えたいという意欲に支えられている。得意分野は異なっても記者の根本的な姿勢や動機は変わらないのではないかと思う」

黒田 「野球での失敗や挫折がたくさんあった。でも、体験を伝えることで、若い人たちに役立つのなら伝えていきたいとも思えるようになった。それがいまのエネルギーになっていると思う」

質問 若いときに、どんなチャレンジをすべきか。

池上 「いま興味のあることを精いっぱいやっておくべきだと思う。一般的には、本をたくさん読んでおこう。特に古典を勧める。海外の第一線で活躍しているような人々は様々な分野の教養を身につけている。会話についていくためにも大切な素養だ」

黒田 「自分がいま所属している世界が全てだとは思わないでほしい。いま、自分がいる世界よりももっと大きな世界があって、いろんな人々がいる。自分を振り返ると、目の前の野球のことで精いっぱいだった。高校時代にこんなふうに考えられたなら、野球への取り組み方や考え方は変わっていたのではないか。若者にはいろんなチャンスがある。枠を決めずに、可能性を広げていってほしい」

(構成は倉品武文)

[日本経済新聞朝刊2019年4月8日付]

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