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重度の肥満に外科手術 胃を一部切除、保険適用で急増

糖尿病改善の効果も

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NIKKEI STYLE

肥満は糖尿病や高血圧、脂質異常症など多くの病気の危険因子だ。食事や運動、薬などで治療するのがメーンだが、多くの人にとって体重を減らし、それを維持するのは難しい。非常に太っている人は胃を小さくするなどの減量手術も選択肢だ。糖尿病などを改善する効果も期待できる。手術を受ける際は食事など生活習慣の改善が重要で、専門家は「減量のきっかけと考えてほしい」と指摘する。

「115センチメートルだった腹囲が90センチメートルになった。着られる服の種類も増えた」。兵庫県西宮市に住む長距離バス運転手の男性Aさん(43)は笑顔をみせる。同市内の兵庫医科大学病院で2018年11月に胃を小さくする「腹腔(ふくくう)鏡下スリーブ状胃切除術」と呼ぶ手術を受けた。体重を身長の2乗で割って出すBMI(体格指数)は手術前には37だったが今は30を切る。

Aさんは以前、食べる量も多く、行く先々で「ご当地ラーメン」の店などをはしごしていた。体重は110キログラムを超え、睡眠時無呼吸症の治療もしていた。テレビ番組で手術のことを知り、同病院を受診した。

腹腔鏡下スリーブ状胃切除術は2014年に国の保険が適用された。患者は(1)BMIが35以上の高度肥満(2)半年以上の内科的治療でも減量効果がない(3)糖尿病、高血圧症、脂質異常症、睡眠時無呼吸症のうち1つ以上を合併――を満たす必要がある。

BMI35未満の人なども手術を受けられるが、自由診療となる。国内の肥満症の手術はこの方式以外も含め、18年に600例以上実施された。約50の医療機関が手掛けている。保険適用以降、急増した。

腹腔鏡下スリーブ状胃切除術では胃の約80%を切除する。残す部分は約100ccとバナナ1本程度の大きさだ。食事の摂取量を制限して体内に入るエネルギーを減らす。患者は手術後、少し食べれば満腹になる。低カロリーの「フォーミュラ食」などをとる。

執刀医は腹部に小さな穴を複数開け、腹腔鏡を入れる。胃を切ると同時に細かいホチキスのような針で閉じる専用器具などを使う。兵庫医大の倉橋康典講師は「傷口が小さく負担の小さい手術だが、太っている人が対象なので医師の熟練が要る」と話す。手術後に逆流性食道炎などの合併症が起こる可能性もある。

また、重症の肥満症で糖尿病の症状も重い人では、腹腔鏡下スリーブ状胃切除術に「十二指腸空腸バイパス術」を組み合わせることも検討される。ただ保険診療と保険外の自費診療を併用する「先進医療」となっており、施設も限られる。

 減量手術は物理的に胃を小さくする以外の効果もある。食欲を刺激するホルモン「グレリン」を分泌する場所も切除するからだ。「インクレチン」などのホルモンや胆汁酸が増え、血糖値を下げる効果も期待できる。手術を受ければ糖尿病の症状が落ち着いた状態が続く「寛解」になる例も多いという。高血圧や脂質異常症も改善が期待できる。

現代人は太りすぎが問題となっている。糖尿病など様々な病気のリスクを高めるからだ。日本ではBMI25以上が肥満に分類される。国の調査では国内で糖尿病が強く疑われる患者は推計約1000万人、予備軍も同1000万人いる。

東邦大学医療センター佐倉病院(千葉県佐倉市)の龍野一郎教授(日本肥満症治療学会理事長)は「最近の調査では高度肥満の糖尿病患者は国内で推計30万人おり、このうち約3万人は肥満の外科手術を必要としている」と話す。「日本社会では肥満が自己責任で、肥満そのものが病気だとの認識が低い」と指摘する。

欧米では約60年前に肥満症手術を始め、今では複数の方式で年間数十万件の肥満症手術を実施する。効果を裏付けるデータも出ている。スウェーデンの研究チームによる20年間の追跡調査では、手術を受けた人は減った体重を長期間維持できていた。米国チームの研究では、手術を受けた人で12年後に糖尿病だったのは3%。一方、受けなかった人は26%が糖尿病だった。

肥満症治療で手術を選べるのはよいことだが、関西医科大学(大阪府枚方市)の井上健太郎准教授は「楽にやせるための手段と捉えるのは間違い。基本は内科治療で手術はプラスαと考えてほしい」と訴える。

同大病院では患者に手術前後の注意点などを記した冊子を渡す。そこには、手術だけ受けると「食べられないストレスで気持ちが不安定になりやすくなります」「手術後も食べ過ぎてしまい小さくなった胃が破れます」「良い生活習慣を身につけられずリバウンドします」との文言もある。

患者はまず手術のことをよく理解し、通院でこれまでの生活習慣を改善して減量に努めることが重要だ。

◇  ◇  ◇

心と体、多面的に治療 精神科医らチームで

肥満症の手術は内科や外科だけでなく精神科医、臨床心理士、管理栄養士、健康運動指導士、看護師などがチームを組み、多方面から患者に対応することが大切だ。摂取カロリーの制限や運動による減量に何度も失敗した経験を持つ患者が多く、精神疾患のうつ病やそううつ病、摂食障害、不安障害などを抱える例もあるからだ。

患者の中には「食べてストレスを解消している」という人も、逆に「また食べてしまった」と後悔する人もいる。東邦大学医療センター佐倉病院の斉木厚人准教授は「患者は体も心も問題を抱えている。単に体重を減らすために病院に来たのではない」と話す。

兵庫医科大学病院は「手術を希望する患者全員に精神科を受診してもらっている」(精神科神経科の吉村知穂助教)。物理的に食べられなくなることや、減量に伴う心理面の変化に耐えられるかなどをみる。重い精神疾患がある場合、その治療をしてから手術に進むこともある。同様の手順を設ける医療機関は多いという。手術後も含め患者を長く支える態勢を作ることも大切だ。

(長谷川章)

[日本経済新聞朝刊2019年4月8日付]

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