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池上彰と黒田博樹が語り合う 人生の壁の乗り越え方

スペシャル対談(上)

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NIKKEI STYLE

先輩たちはどのように人生の課題や挫折を克服してきたのでしょう。ジャーナリストの池上彰さん、日米通算200勝という偉業をなし遂げた元プロ野球選手の黒田博樹さんが、高校生や大学生を対象にした特別講演「人生の壁を乗り越えて」で体験を語りました。新生活を始める若者たちへ生き方のヒントを贈ります。(司会は編集委員 鈴木亮)

司会 どのような高校時代を送っていたか。

池上 「都立高校で学んでいた。当時は自由闊達で、のびのびとした環境だった。ところが大学受験に臨んだ1969年という年は、大学紛争の嵐が吹き荒れ、東京大学などの入試が中止になってしまうほどの年だった。最終的に慶応義塾大学経済学部へ進学する道を選んだ」

黒田 「野球の強豪校、大阪の上宮高校へ進学した。優秀な選手が多く、『エースナンバーを背負って甲子園で優勝投手になるんだ』という目標は1年生で遠のいた。上下関係も厳しく、練習もきつかった。両親との約束だった3年間野球をやり抜くという目標に切り替え、打ち込むことにした。一日一日をしのいでいくことで精いっぱい。大学で野球をやるかどうか考える余裕はなかった」

司会 黒田さんはプロ野球選手として、池上さんは報道記者としてそれぞれ社会人生活を始めた。

黒田 「いま振り返るとプロ野球の世界に入ったことで満足してしまっていたように思う。同期の入団投手が2ケタ勝利をあげて新人賞を取り、ずっと差をつけられている感じがした。毎年、新しい選手が入団し、チームメートがライバルになった。下から突き上げられる危機感みたいなものを感じるようになり、入団後4~5年目には『このままではクビじゃないか』と焦り始めていた」

「気持ちを強くするためにメンタルトレーナーと契約して助言を得た。シューズの靴底の厚みをミリ単位で変えるなど、考えられる様々な工夫を試してみた。せっかくプロのユニホームを着ているのだから、後悔しないようやり切らないともったいないという思いが強くなったと記憶している。試合や練習の後、先輩たちについて行き、教えてもらったことも大きかった」

試行錯誤 後の糧に/先輩の助言で救われた

池上 「子どものころから地方取材をする記者になりたかった。初任地は島根県松江市。新人時代は警察関係者との間合いの取り方が難しく、勇気がなく警察署にすら入れないこともあった。実は同期生にも心配されるほどの人見知りだった。当初、取材方法や人間関係づくりに悩んでいた。そんなとき記者クラブにいる他社の先輩記者にアドバイスをもらうことができた。いわゆる『斜めの関係』に救われたと思う」

「原稿の書き方を学ぼうと、自分なりに工夫をした。NHKの先輩の原稿を書き写したり、ラジオのニュース番組を録音して書き起こしたりした。デスクから『取材したことを原稿に盛り込め。中間搾取するな』と指摘されたことがいまも記憶に残っている。わかりやすい原稿を書くために必死で試行錯誤していた」

司会 誰にでも人生の転機がある。池上さんはNHKを辞めてフリージャーナリストになったときではないか。黒田さんは米メジャーリーグへの挑戦。そして、高額年俸を断って日本のプロ野球界への復帰を決断したときではないか。

池上 「東京の社会部で記者をした後、5年間、首都圏ニュースのキャスターを務めた。日ごろから『ニュース原稿はわかりやすく』と言い続けていたら、今度は子どもたちにニュースを理解してもらうための新番組『週刊こどもニュース』を任されることになった。この番組に11年間かかわったことが、後にフリーのジャーナリストになってから大きな財産になったと感じている」

「NHKを辞めたのは、解説委員長から『専門分野がないから解説委員にはなれない』といわれたことがきっかけだった。自分の強みは何かを考え直し、物事をわかりやすく解説するという専門性があるのではということに気づいた。フリーになって関心のあるテーマで本を書きたいと考えていたけれど、民放のテレビ局に出ようという考えがあったわけではなかった」

黒田 「2ケタの勝ち星をあげ、カープで一番の投手になることを目指していた。貴重な経験だったのが2004年のアテネ五輪の日本代表となったとき。他球団の松坂大輔投手や上原浩治投手をみて、自分の力が足りないことを感じた。もっと広い世界で試したいと考え、次に挑戦するステージとして米メジャーリーグが浮かんだ」

「メジャーで7年間投げ続け、最終的に日本へ復帰することを決断したときの気持ちはいまもよくわからない。メジャーでは一年、一年が勝負だったし、日本に戻るならカープしか考えられなかった。メジャーでも必要な選手とされながら、日本球界に帰ることが一番意味があると思っていた。それがメジャーで投げ続けるモチベーションでもあった。カープに戻った後、若い選手に質問されたときには失敗談を伝えるようにしていた」

司会 今後を含めて、いま、どんなことを考えているか。

黒田 「現役時代は先発投手の一員として完投し、2ケタ勝利をあげることを目標にしてきた。その一つ一つの積み重ねが200勝という数字につながった。しかし、心身ともに難しくなってきたと判断したので引退を選んだ。自ら成績を残すことと、コーチになってほかの選手を指導することというのはまったく別の話だと思う。相当な覚悟がいるし、勝負の世界の大変さを知っている。指導者としてユニホームを着る姿が想像できない」

池上 「NHKで記者16年間、キャスターを16年間務めた。NHKを辞めた後、フリーで働いてきた時間が間もなく同じくらいの長さになる。本や原稿は書き続けていきたい。ただ、テレビの仕事というのは特に滑舌や瞬発力が大事な分野だ。自分が衰えてくることに気づかなくなることが怖い。今回、黒田さんの話を聞いて、自らの出処進退を考える時期が必要なのではないかと感じている」

次回は、若者の疑問に池上さん、黒田さんが答えた特別講演(下)を掲載します。

いけがみ・あきら 1973年、NHKに入局。松江放送局、呉通信部を経て東京の社会部で、長年記者を務めてきた。「週刊こどもニュース」のお父さん役を11年間担当。2005年に独立。12年に東京工業大学教授、16年から特命教授。68歳。
くろだ・ひろき 1997年、広島東洋カープに入団。2008年から米メジャーのドジャース、ヤンキースに在籍。15年にカープへ復帰。16年に日米通算200勝を達成、カープの25年ぶりのリーグ優勝に貢献し、引退。背番号15は永久欠番。44歳。

大物を鍛えた 若き日の苦労

あまり緊張しない性分なのだが、この大物対談の司会役だけは、数日前から緊張した。対談が実現したきっかけは以前、黒田さんにインタビューしたとき、池上さんの番組のファンであると判明したことだ。池上さんがカープファン、黒田さんファンであることは承知していた。お互いリスペクトする間柄とあって、大物対談はとんとん拍子で実現した。

お二人には共通点がある。それは「人生、後ろに行けば行くほど、どんどん良くなる」こと。黒田さんの野球人生、池上さんのジャーナリスト人生、いずれも後半に大輪の花が咲いた。

逆に言えば、若いときはお二人とも苦労された。高校時代、黒田さんは補欠投手だった。池上さんは初任地の松江で、持ち場の警察署になかなか入れなかった。若いときに壁にぶつかっても、それを愚直に乗り越える。その積み重ねが道を開いていく。

今、壁を感じたり、つらい思いをしたりしている高校生、大学生にとって、この日のお二人のメッセージは、きっと心に届いたと思う。

(編集委員 鈴木亮)

参加の高校・大学生ら思い 「日々の積み重ね大事」「成功者の挫折に驚き」

特別講演には高校生や大学生約100人が参加した。若者が寄せた感想には様々な発見や思いが記されていた。一部を紹介する。

共通していたのは、自らの道を切りひらくには「日々の積み重ねが大事」といった反応だった。部活動や就職活動といった自らの体験に重ねる声が多かった。厳しい環境にあるときほど「いまできることを地道に取り組むという生き方に共感した」ようだった。

さらに、池上さんが新人記者時代、他社の先輩から助言を得た「斜めの関係」に注目し、実践したいという声もあった。また、黒田さんが引退を決断した際、ファンの惜しむ声があるなかで、自ら選択することの難しさ、大事さを感じたという指摘が寄せられた。

意外だったのは「実績をあげた著名人が若いころに多くの悩みを抱え、乗り越えてきた」という驚きの声が目立ったこと。若者たちの意識のなかには「成功者には挫折はない」という誤解があるのかもしれない。

若者たちは、池上さん、黒田さんの具体的な体験談や助言を聞き、人生を考える貴重な課外講座を体験したのではないだろうか。

(特別講演、聴講者の感想の構成は倉品武文)

[日本経済新聞朝刊2019年4月1日付]

「池上彰の大岡山通信 若者たちへ」は毎週火曜日に掲載します。これまでの記事はこちらからご覧下さい。

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