切り花は長く楽しむ 毎日新鮮な水、水中で茎切り
自分で購入したり、誰かにいただいたり。卒業式や入学式、送迎会など、春は花に触れる機会が増える時期だ。花がある生活は心が安らぐ。切り花を、長く楽しむコツをおさらいしよう。
美しい花束を少しでも長く飾りたい。「肝心なのは新鮮な水をたっぷり吸わせること」と日比谷花壇(東京・港)のシニアデザイナー、西沢真実子さんは話す。
水中で茎切り 本来の力戻す
花束は水から離れている状態で、すでに水不足だ。できるだけ速やかにラッピングをほどき、茎についたゼリー状の保水剤を洗い流した後、茎の切り口を水につける。続けて水中で、茎の先1~2センチメートルほどハサミで斜め切りする。
「水切り」と呼ぶこのひと手間で「水を吸い上げようとする植物本来の力が戻る」(西沢さん)。水中で切ることで、茎の導管に空気がつまるのを防ぐ効果も期待できる。
次は花瓶を用意しよう。水は3分の2を目安に多めに入れる。水が汚れる原因になるので花瓶の中に入る葉は取り除く。花束を巻き付けているゴムやひもは外さず、そのデザインのまま飾ってもいい。
できるだけ長持ちさせたいなら、直射日光や冷暖房の風が当たる場所は避ける。とくに春に出回る花は光に反応しやすい。涼しくて暗い場所に飾れば、より長く楽しめる。
日常の手入れは水の入れ替えが基本だ。水が汚れてきたら花瓶をきれいに洗い、水を替える。茎にぬめりがあれば洗い流し、再び茎の先を数センチ切るといい。花束に付属することが多い切り花長持ち剤を使うと、水替えの頻度は少なくて済む。
インターネット上で、漂白剤を入れると長持ちするといった情報も出回っている。しかし、西沢さんは「切り花長持ち剤を使うか、毎日水を替えてその都度、茎の先を切るのが確実」という。
枯れたり、しおれたりした花や葉は取り除く。花が少なくなってきたら小さな花瓶に移し替え、ばらして飾ろう。
花瓶にうまく飾れないと感じることも多いだろう。そのときは、花瓶の選び方を間違えている可能性がある。
花の美しさを引き立てる花瓶の代表は、首がすぼまっているつぼ形。コップのような口が広い寸胴やラッパ形ではばらっとした印象になってしまうからだ。陶器の花瓶は、日増しに汚れる水や朽ちる茎や葉が目立たないのでおすすめ。水の中が透けるガラス容器を使うならば、頻繁に手入れをしよう。
細口の器を意識 バランス整える
家に花瓶がないときは空いたボトルや缶、グラスなど、身の回りにあるもので代用できる。細口のものを意識して選ぶと、全体のバランスが整えやすい。
花瓶に花を生けるときもルールをおさえるとうまくいく。フラワースタイリストの梅田佳苗さんは「花瓶の大きさと、花の高さのバランスを意識するといい」とアドバイスする。花瓶の高さと口の広さを足した長さの2倍を目安に、一番長い花草の高さを合わせるのが黄金比という。
どの花を主役にするかを決め、それが目立つように他の花材を合わせていく。大きなものは低い位置に、線の細いものは高い位置に生けるとまとまりやすい。思い切って茎が曲がっていたり、花弁がゆがんでいたりする花を主役に据えると、個性が出てまとまることもある。
壁側に飾るときは真正面の姿がきれいに見えるように主役の花を据える。リビングや食卓はさまざまな場所から眺めるので、花瓶を中心に花を散らすように生けるといい。
自宅に毎週花を届けてもらう定期宅配を使う人も増えている。クランチスタイル(東京・品川)はポストに投函(とうかん)して花を届けるサービス「ブルーミーライフ」を展開する。「メイクの時間が豊かになると、ドレッサーに飾る人もいる」とマーケティングチームの矢口大希さんは話す。
市場から直送で花を定期的に届ける「ライフルフラワー」は花の入った箱がそのまま花瓶になるパッケージが人気。届いたらそのまま飾るだけでいい。水分をためこむゼリーが入っているので、水替えが不要だ。花農家から届けられるため、鮮度がウリ。平均1~2週間楽しめるという。
新鮮な花は花弁がピンと張り、葉の先が上向き。花を購入するときの目安になる。この時期ならではの花一本から飾ってみてはどうだろうか。
(ライター 児玉 奈保美)
[NIKKEIプラス1 2019年3月30日付]
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