男性の尿漏れ、40・50代の3割が経験 専用品で備え
持ち運び便利に、シミも目立たず
男性が年齢を重ねるにつれて増えてくるのが尿漏れ(軽失禁)だ。下着やズボンについた汚れや臭いを気にしながらも、放置したままの人がほとんど。男性の「チョイ漏れ」のひそかな悩みを解消するため、最近は使いやすさを考慮したケア商品が増えている。
男性の軽失禁は出し切れなかった尿が尿道内にとどまり、残った尿が漏れ出す「排尿後滴下」という現象だ。
女性の尿漏れは重い物を持った時やくしゃみをした時に出るが、男性はトイレを済ませてズボンを整えた後が多い。尿道の周りの筋肉が加齢で衰えることによって尿を出し切れず、健常な男性にも起きる。下着や肌をぬらし不快感を伴う。
深刻な症状ではないので病院には行かないが、他人に相談できず悩んでいる人は多い。花王の2018年5月の調査によると、「軽い尿漏れがある」と回答した男性は40代と50代で3割、60代になると4割近くにのぼった。量は小さじ1杯(5cc)未満の人が8割以上を占める。ただ、少ない量でも「ライトグレーのズボンではしみがはっきり目立つ」(同社)。
埼玉県内の市役所に勤める男性(44)は、仕事がら長時間の会議や外部のセミナーに参加する機会が多い。チョイ漏れが気になり、打ち合わせの内容に集中できないこともしばしばあった。重要なスケジュールがある日は朝から水分を控えていた。尿を吸収するパッドの存在を半年前に知り、装着したところ「ズボンのしみが気にならなくなり、仕事に専念できるようになった」という。
この男性が使用したのが「ズボンにしみない、目立たない」をキャッチフレーズにユニ・チャームが販売している「ライフリーさわやかパッド男性用」だ。下着の内側に貼り付けて使う。2014年から販売を開始し、16年にチョイ漏れ用として吸収量が10ccと少ないタイプを追加した。薄型でポケットに入れて持ち運べるので便利だ。
メーカー各社によると、男性の軽失禁のケア商品の販売は伸びているが、女性用と比べると市場規模はかなり小さい。「男性の尿もれ専用の商品があることはなんとなく知っているが、使い方の具体的なイメージを持たない人が多い」(ユニ・チャーム)という。
花王の調査では、しみや臭いを周囲に気づかれる不安を感じている人が7割を占めるが、対処している人は1割程度にすぎなかった。
一般的な対処法としては、ウエットティッシュでふき取ったり、消臭スプレーを使ったりすることが多いようだ。
ケア用品には抵抗があるという男性向けに、花王は普通の下着のように見える紙の吸水パンツ「リリーフまるで下着1回分ローライズ」を昨年秋から販売している。ズボンをはいて腰からはみ出さない薄型の商品だ。
埼玉県の会社員(63)は「最初は紙のパンツに抵抗感があったが、慣れれば普段通りに活動できるし、ズボンのしみを心配することもなくなった」と話す。
消臭効果や通気性、使い心地などの点でメーカーは製品の改良を重ねている。ドラッグストアやスーパーで販売しているが、「恥ずかしくて店で買いにくい」という男性はネット通販で購入して試してみてはいかがだろう。
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排尿の筋肉鍛え改善も
ケア用品のほかに、ズボンや下着を汚さない排尿の方法がある。排せつ障害の予防・治療などを推進するNPO法人・日本コンチネンス協会(東京・杉並)の西村かおる会長が勧めるのが排尿後のしぼり出しだ。「出し終えたと思っても、尿が残っていると意識して、尿道の根元から先端に向けて指で3回くらいやや力を込めてゆっくりと押し出すのがコツ」(西村会長)という。
看護師である西村会長が病院などで指導するもう一つの尿漏れ改善方法が、普段はしまっており排尿する時に緩む骨盤の底にある筋肉を鍛える体操だ。「おならを我慢するつもりで肛門に力を入れたり抜いたりを繰り返す」。電車の中や家でテレビを見ながらなどいつでもどこでもできる。
尿失禁の量や頻度が増えてきたら、病気の可能性もあるので年齢のせいと自己判断せず、泌尿器科など専門医に早めに相談するのも重要だ。
(近藤英次)
[日本経済新聞夕刊2019年3月27日付]
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