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映画『ROMA/ローマ』 家庭から時代を浮き彫り

2019/3/22付 日本経済新聞 夕刊

動画配信大手のネットフリックスで配信され、国際映画祭で論議を巻き起こしたアルフォンソ・キュアロン監督の新作である。昨年のベネチア国際映画祭金獅子賞や今年の米アカデミー賞監督賞などを受賞した。

東京・銀座のシネスイッチ銀座ほかで公開中

物語は、半世紀近く前の1970年、メキシコシティのローマ地区の家が舞台。住み込みの家政婦として働く先住民の1人の女性の姿を通して、階級や人種を超えた生き方を描く。キュアロン監督の自伝的な色彩が濃いという。

クレオ(ヤリッツァ・アパリシオ)が同僚のアデラと働く家は、ソフィアと夫のアントニオ、4人の子供、ソフィアの母親が暮らしている。彼女は日々の掃除、洗濯、料理、子供たちの世話と忙しい。そんなクレオを子供たちは慕い、ソフィアも彼女に頼っている。

クレオは休暇で知り合ったフェルミンの子を妊娠するが、彼は姿をくらましてしまい、ソフィアが病院で検診させる。一方、ソフィアはアントニオの浮気から夫婦仲が険悪になる。やがて臨月を迎えたクレオは、学生デモで騒がしい街中で学生を銃撃するフェルミンと出会い、ショックで破水して病院に搬送される。

冒頭は家の玄関廊下を掃除する水の流れを長く描くが、その水面に飛行機の機影が映り込む。ラストシーンの空でも飛行機が飛んでいるが、飛行機は変貌する時代の象徴のように随所で姿を見せて興味深い。

全篇(ぜんぺん)がモノクロ映像で描かれ、出来事は長回し撮影を駆使したリアルな演出に徹して緊張感が漂っている。中でも海岸で荒波にさらわれそうな子供たちを、泳げないクレオが救助するシーンは圧巻である。

脚本と撮影もキュアロン監督によるが、ローカルな家庭の出来事から時代を浮き彫りにする才能は見事である。それにしても大きなスクリーンで見るとまったく異なる印象を受ける。2時間15分。

★★★★

(映画評論家 村山匡一郎)

[日本経済新聞夕刊2019年3月22日付]

★★★★★ 今年有数の傑作
★★★★☆ 見逃せない
★★★☆☆ 見応えあり
★★☆☆☆ それなりに楽しめる
★☆☆☆☆ 話題作だけど…

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