ネット先駆者が育む祭典 15回目の東京・春・音楽祭

「東京・春・音楽祭」オープニング公演(15日、東京都台東区の東京文化会館)=青柳 聡撮影
「東京・春・音楽祭」オープニング公演(15日、東京都台東区の東京文化会館)=青柳 聡撮影

2005年に東京・上野で始まったクラシック音楽の祭典「東京・春・音楽祭」が今年、15回目を迎える。企業経営者が始めた異色の音楽祭は1月で約200公演という一大イベントになった。

桜の開花が間近に迫る3月15日夜。東京・上野公園にある東京文化会館小ホールで「東京・春・音楽祭」のオープニング公演が始まった。NHK交響楽団第1コンサートマスター篠崎史紀を中心とした室内楽公演だ。曲目はクライスラー「ウィーン奇想曲」などオーストリア関係の楽曲を中心に、N響の実力派奏者らが躍動感あふれるアンサンブルで聴衆を楽しませた。

1月で200公演

今年の同音楽祭はこの日から4月14日までの約1カ月で、有料・無料含めて約200公演を催す。国内の音楽祭では屈指の規模だ。15回目の今回は世界的指揮者リッカルド・ムーティが若い音楽家のための「イタリア・オペラ・アカデミー」を開講。4月4日にヴェルディのオペラ「リゴレット」を指揮する。ムーティは「私が信じる音楽を若い人に伝える」と意欲的だ。

05~08年は「東京のオペラの森」として独自制作オペラ公演を4回催した。09年から今の名前になり、オーケストラや室内楽、ソロ、歌曲などを組み合わせた総合音楽祭に衣替えした。特に毎年N響が演奏会形式でワーグナーオペラを上演するシリーズが好評で普段オペラ演奏の機会が少ないN響の演奏水準が向上した。

今年から読響も

東京都交響楽団が毎年歌曲の大作を演奏し、今年から読売日本交響楽団も参加する。読響は20年からイタリアオペラの新シリーズも担当。9回目の出演となる読響コンサートマスターの長原幸太は「東京でこれだけ演奏機会をいただける音楽祭はない」と語る。長原は3月26日の室内楽公演のほか、ムーティの「リゴレット」にも参加する。

東京国立博物館など上野の文化施設を使った公演や若手奏者の公演も多い。音楽評論家の山崎浩太郎氏は「世界の一流音楽家と日本の若手の音楽をまとめて聴けるのは貴重だ。文化の集積地、上野にとっても意義深い」と話す。

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IIJ会長 鈴木幸一氏

プラハがお手本■世界的指揮者から激励

IIJの鈴木幸一会長

「東京・春・音楽祭」を企画・運営するのは、日本におけるインターネット事業の先駆けといわれるインターネットイニシアティブ(IIJ)会長の鈴木幸一氏だ。同氏にこれまでの歩みと今後の展望を聞いた。

――音楽祭を始めた経緯は。

「クラシック音楽が大好きで、指揮者の小澤征爾さんと親しくするなか、日本発のオペラを上演したい、と小澤さんとオペラの音楽祭を始めた。小澤さんが降板した2009年以降は私の理想の音楽祭をやろうと考えた。念頭にあったのはチェコの『プラハの春音楽祭』。名称もここから取った」

――運営上苦労した点は。

「企画から音楽家への打診まで直接やる。手間と労力がかかるが、これが音楽家との良好な関係につながった。資金は公的補助金に頼らず、私財と企業の協賛金で賄う。今は約60社に協力いただいている。11年春は東日本大震災の直後で来日予定の音楽家のキャンセルが相次いだが、私は今こそ音楽の力が必要だと訴え、開催に踏み切った」

――続けられた要因は。

「ムーティさんから『音楽祭は毎年続けるのが最も難しいが、ぜひ長く続けて』と激励された。コアなファンにも、クラシックの初心者にも楽しめる企画をどんどんやりたい」

(岩崎貴行)

[日本経済新聞夕刊2019年3月19日付]

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