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ハリウッド揺るがした赤狩り 抗議した俳優たちの気骨

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NIKKEI STYLE

映画の都・米ハリウッド。数々の名作や名優に彩られたスクリーンとは対照的に、映画人らが分断された歴史がありました。東西冷戦のころ、米国に脅威となる共産主義者を排除しようとした、いわゆる"赤狩り"です。米ロサンゼルスでハリウッドの光と影の時代を知る人々の声に耳を傾け、「言論や表現の自由とは何か」について考えます。

2月下旬、米映画祭で最高の栄誉とされるアカデミー賞の第91回授賞式が開かれました。

作品賞には天才的な黒人ピアニストと白人運転手という実在した人物の交流や差別問題を描いた「グリーンブック」が選ばれました。題名は1960年代、黒人旅行者向けに黒人が宿泊できるホテルを紹介したガイドに由来します。今回は移民や差別問題を取り上げる作品が多かったのが印象的でした。

華やかな米映画界で2017年から18年、激震が走りました。ある女優が大物プロデューサーのセクハラ問題を告発したことがきっかけです。SNS(交流サイト)を通じ、同じような悩みを抱いてきた人々に共感を得ました。いわゆる「#MeToo(私も)」運動となって、抗議の輪が世界へ広がったのです。

デモ行進の中心人物のひとりチェルシー・バイヤーズさんに聞きました。「ハリウッドの影響力は世界のスクリーンに及びます。一人では声をあげづらかったけれど、多くの人々の勇気で運動が起きました」

およそ70年前にもハリウッドを分断する大事件がありました。米ソが対立した東西冷戦のころです。米下院の非米活動委員会の議長が宣言しています。「映画業界のどこに共産主義者が入っているか徹底的に調査する」。米上院議員ジョセフ・マッカーシーが赤狩りを主導し、「マッカーシズム」と呼ばれました。「赤」とは共産主義を象徴する色に由来しています。

米政府関係者だけでも600人が追放され、大統領ですら彼を恐れていたそうです。第2次世界大戦後、GHQ(連合国軍総司令部)占領下だった日本でも役所や企業から多くの人々が追放の対象になりました。

ハリウッドでは映画関係者のなかで共産主義者と思われる人物の「ブラックリスト」がつくられ、多くの人々が仕事を失うことになったのです。

喜劇王チャールズ・チャップリンは「反戦・平和主義。社会風刺。博愛精神」を大事にした俳優でした。ところが、そうした作風が「共産主義を容認している」と受け取られ、事実上の国外追放になりました。

脚本家ダルトン・トランボは非米活動委員会で証言しなかったことがとがめられました。映画「ローマの休日」は、別人の名前で原案などを書いていました。アカデミー賞が認められたのは後のことです。

これに対し、俳優らおよそ500人が「言論自由の会」を立ち上げ、「ブラックリスト」に載った人々を支援したのです。「非米活動委員会は憲法で保障された言論の自由に反している」として、ワシントンで抗議デモを行いました。

101歳のマーシャ・ハントさんは当時のデモに参加した俳優の一人です。

「共産主義を恐れる風潮がハリウッドを覆いました。仕事がほしければ『私は共産主義者ではない』という準備された文書にサインせよといわれました。共産主義はわかりませんし、関心もありませんでした」

異議を唱えるだけで排除された時代だったのです。

吹き荒れた赤狩りに疑問を投げかける人物が現れました。米CBSの著名キャスター、エドワード・マローです。彼は「米国には言論や表現の自由がある。なぜ追放されるのか」と考えたのでしょう。マッカーシーの問題点をテレビで指摘しただけでなく、反論の機会を提案したのです。マローは事実に基づいて批判に答えました。マッカーシーの主張への疑問が広がるきっかけになり、やがて自滅していったのです。

その後、トランボは多くの映画作品を手掛け、ハントさんも俳優として活動を広げました。チャップリンは1972年、アカデミー賞名誉賞を受け取るために20年ぶりに米国の地を踏むことができたのです。

南カリフォルニア大のキャンパスには「ブラックリスト」の記憶をとどめるために、人々の名や意見を刻んだ石碑があります。

長年、ハリウッドで活躍してきた日系人俳優サブ・シモノさんは強調しました。「われわれには発言する責任があります。俳優たちがよく発言するようになったのはマッカーシズムへの反発があるのです」

映画づくりは、映画人の情熱や役者魂に支えられてきたといえるでしょう。

米国社会には一方の主張に行き過ぎず、人々がおかしいと思ったことには必ず揺り戻しがあるという特徴があります。振り子のようにバランスを取るのです。米国社会はいま、トランプ大統領の登場によって分断されていますが、きっとその分断を修復する力が出てくることでしょう。

【取材メモから】
(1)ハリウッドには思想を巡り俳優や監督らが対立した歴史があった
(2)最近は多様性社会を考える映画作品も多く、高い評価を得ている
(3)米映画界では、移民の流れをくむ日系人俳優が活躍してきた
 コラム「池上彰の現代史を歩く」はテレビ東京系列で放映中の同名番組との連携企画です。ジャーナリストの池上彰氏が、20世紀以降、世界を揺るがしたニュースの舞台などを訪れ、町の表情や人々の暮らしについて取材したこと、歴史や時代背景に関して講義したことを執筆します。
 同番組の関連映像は動画配信サービス『Paravi(パラビ)』で配信します。

[日本経済新聞朝刊2019年3月18日付]

「池上彰の現代史を歩く」は毎月1回、掲載します。これまでの記事はこちらからご覧下さい。

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