中国・成都女子癒やす 甘みしっとり伝統菓子70円
「表面はかりっと、中身はしっとり。ほどよい甘さが疲れを解消してくれる」。中国四川省成都市の中心部に位置する人気スイーツ店「鄧記新一代糖油果子」。近くのオフィスで働く董香さんは毎週末の夕方にかならず立ち寄り、4元(約70円)を支払って伝統スイーツの「糖油果子」をほお張る。
見た目は、串に刺さった5つの光沢ある茶色いゴルフボール。「白鳥の卵」とも呼ばれ、唐代の著名な詩人、王梵志がその原型とされる菓子のおいしさに恋い焦がれる気持ちをうたったほど。1千年以上の歴史を持つとされる。
作り方はシンプルだ。もち米で親指の爪ぐらいの大きさの真っ白な団子をタネとして作り、四川省で栽培が盛んな菜種油をたっぷり入れた底の深いまん丸の中華鍋に投入。黒砂糖を加え、こんがりと揚げる。最後にゴマをさっと振れば出来上がりだ。
「火加減がポイントだ」。店主の鄧春華さんが人気の秘密を打ち明ける。タネを鍋に投入した直後は低温でじっくりと火を通し、膨らむと、強火に切り替える。黒砂糖も投入してかき混ぜ、表面をコーティングする。油で揚げる約20分間は片時も中華鍋から目を離さない職人技こそが絶妙な食感を作り出す。
もちろん無添加の黒砂糖やもち米など原材料にもこだわる。一度使った油をしっかりとこし、溶けた黒砂糖を取り除く。溶けた黒砂糖が残ると、苦みにかわってしまうそうだ。別のお店で修業した後、7年前に屋台で営業を始めたところ、人気を集めて2年前に店舗を出した。
四川料理やパンダなどで人気の高い成都。糖油果子の店舗が軒を連ね、地元住民や観光客から愛される。近年の開発で街の様子は一変し、鄧さんの店舗で提供する価格も創業時の2倍となったが、1千年の伝統を持つスイーツがホッとしたい女子を癒やす光景は変わらない。
(成都=多部田俊輔)
[日経MJ 2019年3月18日付]
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