「アッと思う点」見つけたい 発想を広げるために読む昭和電工社長 森川宏平氏

読書は、企業の盛衰を考える手がかりにもなっている。

最近、愛読書を尋ねられると、ジャレド・ダイアモンドの『銃・病原菌・鉄』を挙げます。地域ごとに一様でない人類史を、偶然性の要因を織り交ぜて科学的な見方で説いた本です。

なぜヨーロッパ人は文明を発達させて、我々にはできなかったのかというあるニューギニア人の問いから、話は始まります。

人類はアフリカで誕生して各地に広がり、肥沃な土地に偶然たどり着いた者が農業を始めて、人口を増やすことができた。家畜の飼育もそれに適した動物が運よくいた所で始まった。

ヨーロッパ人は銃をつくり出し、鉄を使って優位に立つ。さらに家畜由来の病原菌を各地にもたらし、耐性の無い先住民は大量に死んだ。人口が増えるほど、優秀な天才が多く生まれ、文明を一層発展させたという。

これを企業に置き換えて考えます。長く存続するには、幸運もあるだろうし、優秀な経営者も時折必要なのではないかなど、偶然の要素も含めて、なぜなのかと問い続けています。

経営書もいろいろ手に取ってみるが、読み方は独特である。

最後まで読むことはほとんどないですね。唯一全部を読んだといえるのは『ストーリーとしての競争戦略』です。経営戦略の本は山ほどありますが、これは腑(ふ)に落ちました。戦略はストーリーとして納得のいくものでなくてはならない。著者の考え方をどこまで理解できたかはわかりませんが、ストーリーと戦略を結び付けて考えたことがなかったので、引き込まれました。

経営書は半分くらい読んで、アッと思う点が無ければ閉じます。私が興味を持つところが、著者の思っていることと同じとは限りませんけどね。

『トレードオフ』には、著者と違う意見を持ちました。「上質をとるか、手軽をとるか」、中途半端はいけないというのは同感ですが、この2つがトレードオフだというのには賛成しません。相反する関係にしないようにすれば、面白いストーリーにつながるのではないでしょうか。

私の読書は知識を得ることより、多様な抽象的思考に触れるためです。こういう考え方があるのかということの方が頭に残り、応用が利くからです。

(聞き手は森一夫)

[日本経済新聞朝刊2019年3月16日付]

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