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映画『スパイダーマン:スパイダーバース』誰でも英雄

2019/3/15付 日本経済新聞 夕刊

クモに噛(か)まれ、糸を出す特殊能力を持った高校生ピーター・パーカーは、1962年にスタン・リーとスティーヴ・ディッコによってスパイダーマンとして世に送り出され、多くの人々に愛されてきた。ところが、長年アニメ作りに携わるスタッフたちが生み出した本作では、闇社会の帝王キングピンが時空を歪(ゆが)めたことで世を去ったという設定だ。

その跡を継ぐ運命を背負ったのが13歳のヒスパニック系とアフリカ系のハーフの少年マイルス・モラレスだが、彼には跡を継いで悪を倒す自信がない。そこへ別の次元から戻り、くたびれた中年男になっているピーターが現れたことで、マイルスは彼を師として跡継ぎ修行を始めた。

ピーターと一緒に現れるのが、キングピンが時空を歪めたことで別の次元からやって来た姿かたち、キャラクターの異なるスパイダーマンたちというのがユニークなところ。目まぐるしく、ケバケバしく輝きながら超スピーディーに展開していくドラマと映像の斬新な美しさに息をのむ。

ダンサーのようにしなやかなスパイダー・グウェン、ハードボイルド調黒白のスパイダーマン・ノワールやアジア系の顔の少女、昔の漫画から飛び出してきたようなちびっこキャラのスパイダー・ハム……彼らの誰もがスパイダーマン! ということは、誰でもスパイダーマンになれるってこと? 見てくれより気持ちと行動でヒーローになれる。

スパイダーマンの物語とは、普通の少年が悪と闘いながら勇気と信頼と正義を身に着けてヒーローであることを自覚する様子を追った成長の記なのだろう。

これまでに多くの実写版を見てきて、アニメになってもいまさら驚くことはないと思ってきたが、ここにある斬新な衝撃は初めてのもの。今年のアカデミー賞の長編アニメ賞受賞は当然だった。2D、3D。1時間57分。

★★★★

(映画評論家 渡辺祥子)

[日本経済新聞夕刊2019年3月15日付]

★★★★★ 今年有数の傑作
★★★★☆ 見逃せない
★★★☆☆ 見応えあり
★★☆☆☆ それなりに楽しめる
★☆☆☆☆ 話題作だけど…

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