在庫管理に外注、家事も仕事発想を カジダンへの道
パパ料理研究家 滝村雅晴氏
料理づくりと聞くと、何か特別な難しいことと考える男性は少なくない。だが、素材調達、生産計画など料理は仕事と共通するところが多い。今回はビジネスパーソンの業務経験を、時短家事に生かしていくことについて考えたい。
ビジネスシーンで行き交う言葉を料理に重ねてみると、リソースは「食材」、クライアントは「家族」。納期は「食卓に並べるタイミング」であり、在庫管理は「買い出し」となる。
「仕事は段取りが8割」とよく言われるが、お父さんが家族のためにつくるパパ料理にもあてはまる。平日なら家族がそろう時間帯を押さえ、逆算してそれまでにできるメニューで準備する。余裕のある週末なら、家族が食べたいものを情報収集しておけば食材調達が効率的になる。
段取りを円滑に進める上で気を付けたいのは「一人で抱え込まない」ことだ。仕事では様々なリスクを想定し手当てもする。料理も同じ。お父さんが張り切って運動会の弁当づくりを計画していても、突発の仕事が発生するかもしれない。早い段階で「限界」と明確にすれば、妻も手伝いの算段をつけやすくなる。
職場同様にチーム力を高めておくのも有効だ。普段から子供に料理づくりを体験させておけば、いざという時に貴重な戦力になる。親がすぐに準備できない時、簡単なものを子供が自分でつくって食べることができれば助かる。
ビジネスの現場では業務の外注は珍しくない。家庭料理も、すべて手づくりにこだわることはない。時間がない時は買ってきた総菜でもいいし、冷凍食品を活用すればいい。OEM(相手先ブランドによる生産)といえども、ちょっとした工夫で我が家らしさは醸し出せる。例えば、できあい料理でも旅行先で買った食器を使ってみる。旅での出来事を話題にすることで食卓が楽しいものになる。
料理づくりに慣れた人であっても、あれこれのメニューを最初につくった時は全て初めての挑戦。仕事で経験を積んだお父さんも、新人時代があったはず。料理は全く無理と、はなから決めつけることはない。仕事に置き換えてみれば、家庭料理を始めたばかりの新人お父さんが、先輩である妻に管理職のように振る舞うことが、いかに理不尽であるかも想像できるだろう。
家庭の料理づくりというプライベートな場へ「仕事」の発想を持ち込むことに違和感を持つ人がいるかもしれない。しかし、私が開く料理塾では、エンジニアの人が仕事と対比した上で料理にのめり込むことが結構ある。
大きなプロジェクトの細分化された一部門を担当し、結果が出るまでに時間がかかる仕事をしていると、日々の成果は感じにくいという。その点、料理は短時間でゴールに達し、反応も家族からじかに、すぐ伝わってくる。パパ料理の醍醐味は工夫次第でしっかりとした達成感を得られる点にある。
京都府出身、48歳。1993年立命館大学卒業後、採用PR会社を経てデジタルハリウッド入社。09年パパ料理普及を進めるビストロパパ設立。農林水産省食育推進会議専門委員、大正大学客員教授。
[日本経済新聞夕刊2019年2月26日付]
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