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外国人患者に通訳を 訪日客増で基盤整備・育成急ぐ

2019/2/25付 日本経済新聞 朝刊

外国人患者と医師をつなぐ医療通訳の需要が高まっている。約1年半後に迫る東京五輪・パラリンピックで外国人旅行者が増える見通しに加え、在留外国人も受け入れが活発化するからだ。厚生労働省などは育成カリキュラム基準をつくり、通訳者養成学校などで学ぶ人も増えてきた。

医療通訳コースの授業は週1回で1年間続く(東京都港区)

「がんの『ステージ4』は『末期がん』とは言いません。間違っても『Final Stage』なんて訳さないように」。2月上旬の日曜、通訳者養成学校インタースクール東京校(東京・港)の教室で、講師の関本亨さん(59)の声が響く。週1回、1年間続く医療通訳コースの授業だ。

前半40分はビデオで医学部1~2年生レベルの知識を学び、後半80分が医療英語の授業だ。この日は「試験開腹を行います」といった専門用語を使った英作文や、がんの告知の際の英会話などを練習した。関本さんは自身も医療通訳で「医療通訳は医療と語学、両方の知識が必要で、一生勉強だ」と話す。

同校は2009年から英語と中国語の医療通訳のコースを始め、受講者は現役の通訳から医療関係者までさまざまだ。外資系の事務職だったという受講者の40代の女性は「家族の病気を機に、得意の英語を生かして医療に関わりたいと思った」と受講の動機を話す。

医療通訳は日本語を話せない患者と医師の間に入り、コミュニケーションを手助けする仕事。地域のボランティアや病院内で語学に堪能な職員がすることが多く、国家資格はない。民間の認定資格も複数が並立していたが、在留外国人や観光客の増加を受け、厚生労働省などが育成に力を入れている。

2013年から策定している標準的な知識をまとめた「医療通訳育成カリキュラム基準」もその一つで、インタースクールも準拠した授業をしている。国際臨床医学会などはこのカリキュラム基準を基に、資格認証制度の策定を急ぐ。

■意思疎通を正確に

現場のニーズは高まっている。年間約6千人の外国人が訪れるNTT東日本関東病院(東京・品川)は英語と中国語の医療通訳4人が常駐するほか、10の言語が翻訳できるタブレット14台をそろえる。同病院の国際室副室長の海老原功さんは「医療行為の説明や手術の同意など、外国人相手でも正しく伝わっていなければトラブルになる。医療通訳はなくてはならない」と話す。

医療機関によってはボランティアや家族、友人が通訳をすることもあるが、がんの告知をしても家族が「かわいそうだ」と伝えなかったり患者が友人に知られたくない病気だったり、といったトラブルになった例があるという。

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