朝4時半、ジーパン姿で農家通う 本音を引き出し受注
日東電工社長 高崎秀雄氏(上)
農家への営業はジーパン姿で通った。写真はイメージ=PIXTA
日東電工の高崎秀雄社長(65)は1996年に長野営業所長になった。
長野はエレクトロニクス系の会社が多く、富山や新潟まで営業の足を延ばしました。当時の顧客に偏光板を懸命に売り込んだことが、今のテレビやスマートフォン(スマホ)向けビジネスにつながっています。
営業所の所員は10人弱。ここぞという商談では製品単位で事業のリーダーシップを執れる事業部の人にも来てもらわないといけません。電話一本で事業部から長野に人を出してもらえるように上司と関係をつくることを意識しました。自分が上司を説得できないと、部下は付いてこないと思ったからです。
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地元の農家に受け入れられるようスーツを脱いで営業に回った。
たかさき・ひでお 1978年明治大卒、日東電工入社。2005年日東ヨーロッパ社長。08年取締役。14年現職。大阪府出身。
最も新鮮だったのが農家を回った経験です。長野では収穫したキャベツやレタスを詰める箱の底貼りを半自動で行う機械と、梱包テープをセットにした「おはこシリーズ」という製品を農家や農協に売りました。
赴任したてのある日、農家を訪問するためスーツ姿で出向くと、部下にこう言われました。「次回からはジーパンとTシャツで来て下さい」。スーツで顧客に会うのが営業だと思っていた私は当初、抵抗感がありましたね。
農家に行ってみて、ネクタイではダメだと実感しました。堅苦しく、本音を引き出せる雰囲気をつくれないのです。ジーパンを持っていなかったので購入しました。平日は朝4時半に農家、休日は農協を回り「手で梱包する負担が軽減できますよ」と話しながら製品を実演販売しました。