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妊産婦に薬の選択肢広がる 免疫抑制剤3種が使用可

2019/2/18付 日本経済新聞 朝刊

「妊娠と薬情報センター」では全国から集まる調査票を基にデータベースを作る(東京都世田谷区の成育医療研究センター内)

国内外の論文や薬の使用結果の情報を集めて安全性を確認し、全国の拠点病院を通じて寄せられる年間約1千件の相談のデータベース化も手がける。今回の3剤の解禁に貢献したのはセンター設置以来、初めてだった。

村島センター長は「医師が妊産婦への投薬のリスクにとらわれ、添付文書に縛られている」と指摘する。「母子へのメリットが危険性を上回る場合は、安全を担保したうえで薬を使ってほしい。妊娠や出産をあきらめる女性を減らしたい」

■精神疾患でも悩み

精神疾患に関しても妊産婦の多くが薬の服用につい思い悩んでいる。胎児などへの影響を避けようと妊産婦への向精神薬の処方をためらう医師が多いが、向精神薬や睡眠薬を飲む方が利点が大きい場合もある。

「薬がなければ産後うつは決して改善しなかった」。関東に住む30代女性は4年前に第1子を出産後、うつ状態になった。精神科医に「授乳を続けるなら薬は出せない」と言われ、症状は悪化。「死にたい」との考えが頭から離れなくなり、自殺未遂を起こした。

別の精神科で産後うつと診断された。抗うつ剤や抗不安剤を飲み、症状が劇的に改善した。女性は「一番大切なのは母親が心身ともに健康で笑顔でいること。母親の病気を治すことを優先してほしい」と話す。

東京医科歯科大学の松島英介医師によると、精神疾患を初めて発症する人の多くは15~45歳と、妊娠可能年齢に重なる。この十数年で向精神薬に伴う性機能障害などの副作用が弱まったことや精神的ケアの向上により、精神疾患のある女性の妊娠率は高まっている。

産前や産後に発症する重度のうつ病は自殺の引き金になり得るほか、子どもへのケアができずに発育不良を招くこともある。

松島医師は「母親の精神状態や周囲のサポート体制に合わせて個別に治療戦略を工夫する必要がある」と話している。

◇  ◇  ◇

■薬服用 日本は抵抗感強く 医師、訴訟リスク意識

日本は海外に比べると、妊産婦が薬を飲むことへの抵抗感が根強い。筑波大学の浜田洋実教授(産婦人科学)が日本と米国で使われている403種類の薬を調査したところ、日本で妊産婦向けに禁忌となっていたのは102種類。米国は18種類にとどまった。

浜田教授は「海外では妊娠女性が普通に使っている薬を、日本では使えないという状況は大問題だ。薬で健康を維持して元気な赤ちゃんを産める環境を日本でも整えるべきだ」と話す。

医療関係者には「添付文書通りに処方しないと医療事故が起きたときに訴訟で負ける」とのリスク意識も根深い。添付文書には禁忌とされていても、診療ガイドラインでは使用が推奨されている薬もある。解釈が割れて医師が混乱しているのが実情だ。

そもそも薬による胎児への影響は非常に低いという。一般的に、流産の自然発生率は約15%で、先天異常の自然発生率は3%前後。先天異常のうち、薬が原因とみられる比率は1%程度という。

(松浦奈美)

[日本経済新聞朝刊2019年2月18日付]

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