NIKKEIプラス1

コインロッカーの仕組みを少し見てみよう。荷物を収め、貨幣を投入して鍵をかける――。シンプルなようだが、実は奥深い。駅のロッカーは当初、終電から始発までは人の手で施錠していた。60年代半ばに、終電を過ぎると翌日分の追加料金が加算される「日送り」の仕組みができ、荷物を複数日預けられるようになった。近年はICカードを鍵代わりに、認証や決済できるシステムや、駅構内の空きロッカーを時間差なく確認できるサービスも始まった。

「手荷物を預ける」という本来の用途を超えた使い道も出てきそうだ。アルファロッカー社とKDDI、西武鉄道が実証実験中の「ラクトル」はその一例。ネット通販で買い物した食品や生活雑貨を、最寄り駅のコインロッカーで受け取れる。郊外暮らしで帰宅が遅い人でも、地元の店の閉店時間を気にせずに買い物することができる。

預ける店と受け取る消費者を取り持つのはスマートフォンのアプリに届く6桁のパスワード。コインロッカーがICカードなどのデジタル技術に積極対応してきたことが役立った形だ。やり取りする商品はさまざまに広がる可能性がある。通勤・通学で毎日朝晩使う駅に近い将来、多忙な現代人の時間を節約する魔法の箱が現れるかもしれない。

アルファロッカー社の柳内社長は「ニッチだが日本の社会に不可欠なインフラ。付加機能を取り込み、多くの人が使えるサービスを提供したい」と話す。

コインロッカーの歴史は、まさに日本の「セルフサービス」化の流れと重なる。誰もが気軽に使える利便性は、様々なトラブルへの対応など、緻密なサポート体制によって支えられてきた。半世紀を歩んだコインロッカーからは、日本人のニッチでもキッチリのサービス精神までもうかがえる。

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有人預かり、シェアで復活

「エクボクローク」は美容室やカフェで荷物を預かるシェアサービスだ

コインロッカーに押されてきた有人の手荷物預かりサービス。近年はシェアサービスの考えを採り入れた新ビジネスも登場している。ecbo(エクボ、東京・渋谷)が2017年1月に始めた「エクボクローク」。美容室やカフェなどに登録してもらい、空きスペースで荷物を預かる。利用したい人はウェブサイトかアプリで条件に合う預け先を見つけて予約・決済する。

JR東日本、日本郵便などとも連携。店舗数は都市部を中心に1000店以上に広がった。ゴルフバッグ、ギターや大型楽器、ベビーカーなど「ロッカーに入りきらない物の預け入れも多い」(同社)。預ける荷物や場所の選択肢が広がったのに加え、人が管理する安心感もあるという。「セルフ」と使い分ける人が増えそうだ。

(天野賢一)

[NIKKEIプラス1 2019年2月16日付]