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インフル薬「救急では出さない」病院も 重症者を優先

2019/2/11付 日本経済新聞 朝刊

猛威をふるうインフルエンザ。感染を疑い夜間・休日に救急外来を受診する人も少なくないが、高齢者など重症化するリスクが高い人を除き「インフルエンザ治療薬は原則処方しない」とする病院が増えている。感染の有無などを調べる迅速検査を行わない救急外来もある。不要不急の受診をできるだけ控えてもらい、ほかの重症患者の治療を優先させるためだ。

一宮西病院は救急外来でインフルエンザの対応方針を掲げている(愛知県一宮市)

1月下旬の土曜の夕。愛知県一宮市の一宮西病院の救急外来待合室は、訪れた患者で大混雑していた。

30代女性は昼ごろから39度の熱があり、救急科の安藤裕貴部長にだるさや関節痛を訴えた。安藤部長は「インフルエンザの疑いが強い」と診断。ただ持病がなく重症化の恐れが低いことから、「多くの人は自然に治ります」と説明し、治療薬ではなく解熱剤を処方するにとどめた。

同病院では2018年12月に救急外来でのインフルエンザへの対応方針をまとめ、壁に貼りだした。「高齢者や持病がある人などを除けば治療薬は原則処方しない」と説明。普段健康で比較的リスクが低い人には「思いやりの気持ちで受診を控えて」と求めている。

■患者数昨年の1.5倍

背景にあるのが、冬場の患者の増加だ。気温の低下に伴い、持病を悪化させたり、体調を崩したりして、救急外来を受診する人が多くなる。加えて、今年は地域でインフルエンザが大流行。同病院救急科の1月の1日あたりの平均患者は、昨年に比べ5割増の約300人となった。重症患者への対応が遅れかねず、安藤部長は「普段健康な人がインフルエンザを過度に恐れる必要はない」と訴える。

日本の診療所などでは全ての患者に治療薬を処方するのが一般的だが、世界ではそうでもない。米疾病対策センター(CDC)は65歳以上の高齢者や5歳未満の子供、心臓病などの基礎疾患がある人は重症化リスクが高いとして治療薬の処方を推奨する。一方、該当しない人は「投与を検討してもよい」にとどめ、処方は限定的だ。

「タミフル」「リレンザ」などの治療薬は発熱などの症状をおおむね1日程度短くするとされるが、そもそも発症から48時間以内に服用しないと効果は期待できない。発症初期に感染しているかどうかを診断するのは難しく、投与が間に合わないこともある。下痢や吐き気などの副作用が生じる場合もある。

18年3月には1度の服用でウイルスの増殖を抑えるという新薬「ゾフルーザ」が発売された。手軽な上にウイルスの減少スピードが速く、診療所などでの処方が広がっている。ただ耐性ウイルスの出現が多く報告されていることなどから、投与に慎重な病院は少なくない。

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