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映画『洗骨』 儀式通し描く家族の再生

2019/2/8付 日本経済新聞 夕刊

成長した子供が就職して遠方で働くようになると、それぞれの人生の事情から家族の絆は薄らいでいく。そんな家族の離散は現代社会ではそう珍しくないとはいえ、沖縄の離島を舞台に土地の風習として残る「洗骨」の儀式を通して、家族の絆が再生される姿を丁寧に描いている。

東京・銀座の丸の内TOEIほかで公開(C)『洗骨』製作委員会

沖縄の離島、粟国島に暮らす新城家。母親の葬儀のため、東京の大企業に勤める長男の剛(筒井道隆)と名古屋で美容師として働く長女の優子(水崎綾女)が帰省する。父親の信綱(奥田瑛二)は悲しみから絶っていた酒に再び手を出し、そんな父親を剛は冷たい目で眺める。

この粟国島には、死者を風葬して骨になった後に、その骨を海水や酒で洗って再び埋葬するという洗骨の風習が残っている。いわば第2の葬儀で、死者が祖霊となり、あの世に旅立つという。母親の死から4年後、洗骨のため剛と優子が島に再び帰ってくる。

この4年間、それぞれの人生に変化が生じる。優子は身重で大きなお腹を抱えている。剛は離婚したことがやがて知れる。信綱だけが相変わらず酒浸りの日々だが、ある夜、泥酔した信綱が怪我(けが)をしたことから親子の間に会話が戻る。

かつて大島渚が『儀式』で描いたように、冠婚葬祭は親戚縁者が一堂に会した劇的空間を作り上げるが、洗骨の儀式の最中に優子が産気づき、死と生を向かい合わせる。そこから家族の絆が受け継がれる様を巧みに描き出していく。

面白いのは、悲しみから酒に身を任す信綱が決して「かあさん」ではなく、妻の名を口にすることだ。彼の心には最愛の女性としての妻しかいないが、娘の出産を手伝うことで父親の立場を取り戻し、家族の再生に向かい合うようになる。

ガレッジセールのゴリこと照屋年之監督は、手堅い演出で才能を見せている。1時間51分。

★★★★

(映画評論家 村山匡一郎)

[日本経済新聞夕刊2019年2月8日付]

★★★★★ 今年有数の傑作
★★★★☆ 見逃せない
★★★☆☆ 見応えあり
★★☆☆☆ それなりに楽しめる
★☆☆☆☆ 話題作だけど…

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