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生産日本一 長崎の養殖トラフグ、通もうなる自信の味

2019/2/9 日本経済新聞 夕刊

和泉苑のふぐ鍋は10~15ミリと厚めに切ってあるのが特徴

冬に旬を迎える高級魚トラフグ生産地といわれてどこを思い浮かべるだろうか。「長崎」と答える人はほとんどいないはずだ。養殖出荷量日本一は長崎県でシェアは5割を超える。中でも長崎市戸石町産は味だけでなく安心安全にも徹底的にこだわっている。

「えっ、長崎ってトラフグの養殖日本一だったのですか!」。1月18~19日に東京都中央区にある長崎県のアンテナショップ「日本橋長崎館」で開催された戸石町産トラフグの販促イベントで試食用の刺し身や味噌汁を食べた人のほぼ全員が驚いていた。

長崎の食といえば、ちゃんぽん・皿うどんとカステラが定番だが、実は国内2位の漁獲量を誇る水産県だ。中でもトラフグは知名度こそ低いものの、国内トップシェアを占める代表的な産品といえる。

和泉苑のふぐ刺しには味を引き立てる梅干しなども添えてある

実際、味を体験した人には好評で、用意した食材は終了時間の1時間前になくなってしまった。出展した長崎市たちばな漁業協同組合の道下雅久さん(71)は「戸石では、餌は他の産地では高価で使わないようなイカナゴで育てている。20年以上かけて培った経験で、味は天然物と区別がつかないレベルになってきている」と胸を張る。

長崎市中心街から車で20分余りの戸石町にはフグ料理が堪能できる飲食店が10店ほどある。その中の和泉苑は4980円でトラフグのコースが堪能できる人気店だ。注文するとまず出てくるのがフグ刺し。他地域より厚めに切った身はこりこりとした食感だけでなく、甘みが感じられる。長崎産の甘いしょうゆを使ったポン酢が味を引き立てる。

次は空揚げ。しょうゆやショウガなどがベースのしっかりした味わいだ。ただ、濃いめの味付けに負けないうまみも十分に感じられる。メインの鍋には10~15ミリと厚めに切られた身が並ぶ。締めにはフグのだしがたっぷりと出た雑炊が出てくる。

鍋には骨のある身から入れてだしが出るようにする

和泉苑は地元でトラフグ養殖が盛んになり始めた時期から扱ってきている。会長の和泉新蔵さん(51)は「20年ほど前に比べると本当に味が向上している。どんなに食べ慣れている人にも自信を持って出せる」と強調する。

ただ、長崎県は水揚げされる魚種が豊富で、トラフグは県民の間ではそれほど食べられているわけではない。このため、戸石を除けば提供する店は決して多くなく、観光客にも浸透していない。たちばな漁協の道下さんは「今後は市内の飲食店や宿泊施設などと連携を進めて、気軽に食べられる環境をつくっていき、知名度を高めていきたい」と期待を込めている。

<マメ知識>出荷量 国内の過半
長崎県の2017年のトラフグ出荷量は2000トンで国内の53%を占める。県内では長崎市戸石町のほか、佐世保市や松浦市でも養殖が盛んだ。価格が低迷したタイなどの養殖から転換した人が多く、20年ほど前から本格化したといわれている。
トラフグは体に傷がつくと弱って死ぬことも多く、他のフグをかまないよう年4、5回ほど歯を切るなど手間がかかる。かつては山口県下関市に出荷されることが多かったが、近年は大消費地の関西方面に活魚の状態で出荷することが増えている。

(長崎支局長 古宇田光敏)

[日本経済新聞夕刊2019年2月7日付]

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