透析患者に就労支援の輪 企業とつなぐ活動する団体も労働時間の融通など、企業側の理解も進む

2019/2/6付
ペイシェントフッドの宿野部代表は、自身も週3回の透析を受けながら患者の就労支援を続けている
ペイシェントフッドの宿野部代表は、自身も週3回の透析を受けながら患者の就労支援を続けている

人工透析が必要な患者の就労支援をする取り組みが広がっている。週2~3回、数時間程度の透析が必要となるため、仕事を続けることを諦める患者も多い。ただ医療技術の進歩もあり、体調管理はしやすくなっている。透析の選択肢も広がり、「せっかくのキャリアを眠らせるのはもったいない」と企業側の理解も進んできている。

「時間的な配慮さえあれば、普通に働ける透析患者はたくさんいる」と話すのは一般社団法人ペイシェントフッド代表の宿野部武志さん(50)。2年前、病院や人材紹介会社と連携して人工透析患者の就労を支援するプロジェクトを立ち上げた。医師や先輩患者へ相談しながら数十社の協力企業への紹介を受けられる。

宿野部さん自身も3歳で慢性腎炎を患い、18歳から人工透析を30年以上も続けている。

医療進歩追い風

外回りや残業が続く職場や、体力勝負の仕事は続けにくいのは確かだ。だが宿野部さんは「私が透析を始めた頃に比べ、医療技術の進歩で体調管理のしやすさなどは向上している。働くことは人生のモチベーションを高める」と仕事に就く大切さをアピールする。

仕事を続けるポイントは会社から時間的な配慮を受けられること。午前だけでなく、夕方からの夜間透析、深夜から朝までなど、選択肢は増えている。宿野部さんは「家、病院、職場の三角形をいかに小さくするかが負担を減らす」とアドバイスしている。

宿野部さんと連携する人材紹介会社「IHFヒューマンリソース」の松田洋一会長(69)によると、年に10人程度だった透析患者の就職がこの1年ほどで月6~7人に急増しているという。松田さんは「適切な対応があれば、仕事の経験値が高い人もいる。そうした人材へのニーズはある」と話す。

18年秋、透析の開始に合わせて同社を通じて転職した中山隆一さん(42)。以前は小規模なウェブ制作会社に勤めており、透析が決まった際には上司から「仕事を抜けて病院に行ってもいい」と言われたが、社員の少なさや労務環境から「実際にはここで働き続けるのは難しい」と感じたという。

ハローワークなどで仕事を探す場合、障害者雇用枠での採用になるため、軽作業に回されるなど今までのキャリアとのミスマッチも少なくない。中山さんが紹介を受けて転職したのはウェブマーケティングの仕事。会社は障害の有無に関係なくフレックスタイム制を採用しており、透析に行く日は午後5時に会社を出る生活を続けている。中山さんは「前職の経験を生かし、なおかつ新しいことができる」と喜ぶ。

人工透析患者は重度障害者で、障害者雇用率を満たすため、企業側への利点も大きい。

大手出版で活躍

大手出版のKADOKAWA(東京・千代田)では30~50代の人工透析患者5人が働いている。

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