「夜パフェ」人気、東京にも 旬の果物添え大人の味に
お酒を飲んだ後のシメといえばラーメンが定番だが、数年前から札幌を中心に、はしご酒の後にパフェを食べる「夜パフェ(〆パフェともいわれる)」文化が生まれ、定着しつつある。
居酒屋でもアイスクリームなどのデザートを出すところは多く、飲んだ後の火照った体に、ひんやりとしたデザートは相性が良い。夜パフェは終電前後まで営業する店舗が多く、デコレーションや素材に凝ったパフェを提供する。厳密な定義はないが、盛り付けが華やかで、リキュールを使うタイプなど大人向けに工夫されている。
そうした夜パフェ専門店が札幌から東京都内に進出し、好調な業績を上げている。「パフェテリア ベル」は2017年10月に渋谷・道玄坂にオープンした。広さ39平方メートルの店舗で、月商は平均650万円と盛況だ。運営するGAKU(札幌市)は飲食店経営やコンサルティングを手掛けている。橋本学社長は、札幌で深夜営業のカフェが人気になると読み、パフェ専門店をオープンさせた。
パフェは旬の果物にこだわる。さらに焼き菓子やコンポート、ジュレ、ジェラートなどを自家製して手間を惜しまない。取材時には、シャンパンのムースやエスプーマ(泡)を何層にも重ねた「泡、時々いちご」(1900円)のほか、サバラン(洋菓子)にオレンジを合わせた「プリンセス ベル」(1800円)などアルコールを効かせた大人の味にしている。
パフェは1種類につき10種以上のパーツが組み合わさっており、すべてが手作りだ。パフェは全部で6種類。毎日60種以上のパーツを仕込まなければならない。狭い厨房を効率よく使うため、メレンゲやパイなどの焼き菓子担当は朝8時に出勤する。営業時間は平日は午後5時からで、準備にかなり時間をかけていることが分かる。
それらを組み合わせたパフェは芸術的だ。「1日の終わりにパフェという一個のエンターテインメントを提供しているイメージです」と東京支部長の河口典剛氏は話す。
完成度の高さに比例して、1人前で2000円前後と、やや高額。しかし居酒屋などでもう1軒ハシゴ酒すると思えば、安い方だ。本格的なバーでフルーツのカクテルなどをオーダーしても同程度の値段と考えれば、プチぜいたくと言える。すべてのパフェを制覇したり、何度も来店し、「インスタグラム」に投稿したりするファンも多い。毎月1~2種類ずつメニューが変わるため、何度来店しても新鮮だ。
同店はオープンから2カ月後に、売り上げが想定の1.5~1.7倍に伸びた。ビルの3階にあり、行列が階段を埋めてしまうため、整理券を配布しており、午後8時を過ぎると1時間待ちは当たり前。90分待ちになることもある。
都内では女性同士、カップルなどの客層が主流だが、札幌では男性同士でパフェを楽しみに来店する中高年も多い。「締めくくりにちょっといいデザート」の需要は大きそうだ。
店内ではウイスキーを中心に、甘味に合うアルコールのメニューも提供している。シメだけではなく、「パフェ+酒」という新たな飲みスタイルとしても受け入れられそうだと感じた。今後は都内での出店拡大を検討中。ほかの主要都市での進出を狙っているという。
(フードジャーナリスト 鈴木桂水)
フードジャーナリスト・食材プロデューサー。美味しいお店から繁盛店まで、飲食業界を幅広く取材。"美味しい料理のその前"が知りたくて、一次生産者へ興味が尽きず産地巡りの日々。取材で出会った産品の販路アドバイスも行う。
[日経MJ 2019年2月1日付]
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