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皮までうまい、鷹山公ゆかりの鯉の甘煮 山形・米沢

2019/1/24付 日本経済新聞 夕刊

鯉を甘辛く煮込み、食べ残すところがほとんどない鯉の甘煮(鯉の六十里)

米沢牛が有名な山形県米沢市では冬の風物詩として鯉(コイ)料理が欠かせない。冷たい清水で育てられた鯉は、正月のごちそうとして甘煮(うまに)などで親しまれ、米沢藩の上杉鷹山公が推奨したともいわれる。ただ、どんな味なのか。食わず嫌いで避けてきた鯉料理に挑戦した。

清らかな水で養殖することで臭みのない鯉に育つ(鯉の六十里の養殖池)

一度、食べてもらえば分かります――。「川魚は臭そう、骨が多そう、見た目が……」といった先入観を正直に話すと、鯉の六十里社長の岩倉利憲さん(48)はちょっと悲しそうな顔をした後に、力強く鯉料理の魅力を語った。

古民家を移築した店の脇に養殖池がある鯉料理の名店。代表的な一品である甘煮は、輪切りにした身を甘辛く煮詰めたもので、一見すると骨が多くて食べにくそう。しかし、一口食べて印象は一変した。臭みは全くなく、「途中で枝分かれしているから食べにくい」(岩倉さん)という骨も気にならないレベルだ。

骨が食べられるよう煮込んだ鯉のことこと煮(上杉伯爵邸)

身に加え、太い骨かと思った卵は歯応えがあり絶品。焼き鳥のレバーのような部分は内臓と言われたじろぐが、レバーよりも臭みがない。さらに美味なのが皮だ。「酒のつまみになる」(同)と言い、歯応えがあってかみ続けるとするめのように味が広がる。

臭みがないのは濃い味付けだからかと思ったら、岩倉さんは「臭い魚はどんなに味を付けても無理。雑食の鯉は川で釣ったものは臭いが、卵から管理する養殖は別物」と強調する。甘煮は素材の良さをいかし圧力鍋を使わないが、一部の骨とかみ切れない皮以外、皿には残らなかった。別メニューのかば焼きは薄味のたれを使い、骨を切った身が花びらのように舞う。ウナギや穴子とは違うあっさりとした食感はクセになりそうだ。

上杉神社に隣接する上杉伯爵邸では伝統料理を集めた「献膳料理」の一品で「鯉のことこと煮」を提供する。ピンポン球の大きさにしたすり身で、「鯉と分からない人も多い」と、総支配人の遠藤勲さん(36)。他にも甘煮や鯉こくといった一品料理のほか、事前予約であらいや油で揚げた鯉せんべいも楽しめる。ただ、伝統料理の看板を掲げる同店もメニューは米沢牛が中心。「鯉のコース料理はあまりにも注文が少なく2010年にやめた」(遠藤さん)という。

居酒屋、鯉よしでは丸揚げなど珍しいメニューもある。仕込みが必要なものもあり数日前からの予約が安心だ。

170年の歴史を持つ鯉の宮坂は甘煮などを作る加工会社。10年以上前に米沢牛の関連商品を始めた。市場の変化に対応するためだが、社長の宮坂宏さん(60)は「鯉を死守する」として、鯉のコロッケなど新製品で巻き返しを図る。

<マメ知識>復活へ大学がレシピ開発
鷹山公がお堀での養殖を推奨したという鯉は栄養価が高く、米沢地域では産前産後に食べさせる風習もあったという。また、正月は鯉を食べ、結婚式も鯛(タイ)ではなく鯉が一般的だったというが、急速に廃れて、市内の養殖場も数社に減った。
そこで、県立米沢栄養大学は2019年度に復活プロジェクトを始める。要因分析をして、若い人にも受け入れられるレシピを開発する。北林蒔子准教授は「きれいな水で育てる安心安全な食材。栄養面の良さも改めて調査したい」と意気込んでいる。

(山形支局長 浅山章)

[日本経済新聞夕刊2019年1月24日付]

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