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モノ・フラッシュ

今や車も仏壇も売る ホームセンターとくらしの半世紀

NIKKEIプラス1

2019/1/19付

PIXTA

日本にホームセンターが登場してから約半世紀。住関連商品なら何でもそろう便利な存在だ。店内の体験工房は家族連れで楽しめたり、自動車まで売る驚きの品ぞろえだったりと、時代にあわせ進化し続けている。

「テープは空気が入らないよう真っすぐに貼ってください」。塗料売り場の担当者の指導を受けながら、埼玉県ふじみ野市の男性(42)は真剣な表情でマスキングテープを木材に貼り、ペンキを塗る。

2018年秋に開業したカインズ新座店(埼玉県新座市)の「カインズ工房」では壁塗り体験ができる。木材の加工や塗装、金属の溶接などの工具をそろえ、原則無料で工具や作業場を使える。体験教室も日替わりで開かれ、専門家の指導も仰げる。

こうした工房が生まれた背景にあるのはネット通販の台頭。同社広報室の鈴木ゆう子さんは「体験工房は実店舗ならではの強み」と話す。集客にも貢献。約4年前に最初の店舗を出してから34店舗に拡大、今後も増やす。他社も積極的に採り入れ始めている。

今でこそ身近な存在のホームセンター。日本での出発点はどこか。専門誌「ダイヤモンド・ホームセンター」の下田健司編集長は2説を示す。

一つが中国地方を地盤にするジュンテンドー説だ。前社長の飯塚道正氏が1968年に米国の小売業を視察団と訪れた際、巨大な住関連商品の専門店を見て「ホームセンターの時代が来る」と直感。69年9月に島根県益田市に金物や家電などを集めた「ハウジングランド順天堂益田駅前店」を出したという。

息子で現社長の正氏は「益田は昔から商人の町で外に目を向けて商売する土地柄。オヤジもその気質を受け継いだのかもしれない」と述懐。同社は今年開業50周年を祝う。

もう一つがドイト説。72年に自分で住関連のモノを作ったり直したりするDIYの専門店として開業した与野店(さいたま市)が先駆けという。当時の経営陣が米国視察でDIY専門店を見て導入した。「日本で最初にDIYの概念を持ち込んだ点ではドイト説も有力」と下田編集長。

その後、異業種からの参入も相次ぎ、群雄割拠時代に。例えばコーナンはガソリンスタンド、ナフコや島忠は家具、コメリは米穀商。そもそもジュンテンドーも明治時代から続く薬局だった。業界の年間総売上高は4兆円に迫り、店舗数も4700を超える。

ホームセンターは世相を反映して品ぞろえを増やしてきた。例えばバブル経済崩壊後に家庭菜園熱が高まると、各社は園芸資材売り場を拡充。種苗や球根、生花など多種多様な商品を店頭に並べた。1990年代以降、ペットブームが起こると、犬や猫、熱帯魚などの生体を取り扱う店も徐々に増えていった。

客層も拡大している。かつてプロや日曜大工が趣味の男性客が多い印象だったが、今は女性に人気のインテリア売り場やカフェ、フードコートもある。週末は家族連れ、平日は主婦の姿も目立つ。

品ぞろえを増やし、多様な顧客に応えようと店舗の大型化が続く。関東を地盤にするジョイフル本田は敷地面積で10万平方メートル、売り場面積で5万平方メートルを超える超大型店を6店舗出店してきた。

マキオ(鹿児島県阿久根市)が同霧島市に出した超大型店「A―Zはやと」も売り場面積が3万4000平方メートル。品ぞろえがユニークだ。一般のホームセンターではまず扱わない自動車や小型耕運機、仏壇まで販売。特に自動車は軽をはじめワンボックスカーやRV車など常時200台以上を展示し、一般の自動車販売店よりも売れるという。

買い物を1カ所で済ますことができ、半ばレジャー施設化するホームセンター。欧米に比べ住環境に手をかけないとされてきた日本人に、次はどんな豊かさを提供してくれるのだろう。

◇  ◇  ◇

■災害時にも頼れる存在

周防大島の店舗では大量のポリタンクを用意した(山口県周防大島町)

豊富な防災グッズの品ぞろえもホームセンターの魅力。昨年は各地で大災害が相次ぎ「防災用品の供給責任は大きく、いち早く物資を届けるのが使命」とジュンテンドーの飯塚正社長は力を込める。

同社は西日本豪雨で道路が寸断された広島県呉市などの店舗にフェリーで物資を運搬。橋に貨物船が衝突し1カ月以上断水した山口県の周防大島でも島内店舗にポリタンクや飲料水を大量に並べた。

北海道胆振東部地震で停電の際も、DCMホーマック各店は屋外の臨時売り場でガスコンロや懐中電灯などを販売。札幌市内の店には千人以上が並んだ。地域に根ざしたホームセンターは、今後も、困った時に頼れる存在であり続けるだろう。

(高橋敬治)

[NIKKEIプラス1 2019年1月19日付]

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