さきイカをフル活用 うまみ・歯応え抜群
管理栄養士 今泉マユ子
これまでに紹介した時短料理のレシピでは、主に缶詰やレトルト食品などを活用してきた。時短料理にうってつけの加工食品は、他にもまだまだたくさんある。
その1つが酒のつまみの定番、さきイカだ。さきイカをおかずにご飯を食べることもできる。良いだしがでるので、毎日の料理にもぜひ取り入れてみよう。
さきイカをキッチンバサミで切り、野菜と一緒にごま油でいためたり、キュウリと一緒にポン酢であえたり。具材兼調味料になる。塩分を含んでいるので他の調味料は少なくて済む。開封前は常温で保存でき、日持ちするので、備蓄にも使える。
温かいご飯に刻んださきイカとワサビ、白ゴマをのせて熱々の昆布茶をかけ、きざみのりを散らすと、お酒を飲んだあとの〆にぴったりのお茶漬けが完成する。
福島の郷土料理「いかにんじん」にはスルメを使うが、私はさきイカで作る。ニンジン1本分をピーラーでカットしながらポリ袋に入れ、さきイカ1袋(30グラム)、ポン酢大さじ1、黒ゴマ大さじ1を加えてよく混ぜ、2~3時間置く。おかずにもつまみにもなる。
さきイカの原料であるイカは、栄養面でも優れている。ドコサヘキサエン酸(DHA)やエイコサペンタエン酸(EPA)が豊富で、特に脂肪肝の予防や改善に効果があるタウリンがたくさん含まれている。さきイカを酒のつまみにするのは理にかなっているのだ。
ところで、スルメとさきイカの違いはご存じだろうか。スルメは日本の伝統的な加工食品。平安時代にはすでに生産されており、当時から儀式や儀礼で用いられていたという。「あたりめ」とも呼ばれ、イカの内臓を取り除いて乾燥させたものだ。さきイカは製法が異なる。スルメや生イカを焼いて引き伸ばした後に裂いて作る。軟らかめの食感が特徴だ。
いずれも適度な歯応えがあるため、よくかむことによって唾液が増え、消化酵素も豊富になり体内の活性化を促す。かめばかむほど満腹中枢が刺激され、少量食べるだけで空腹が解消されるので、ダイエット効果も期待できる。よくかむと脳の血流がよくなり、酸素を多く運ぶので、イライラの解消にもつながる。
イカは加工品として消費される比率が高い。さきイカの他にもくん製やイカ天、酢漬けイカなどが、コンビニや駅売店、お酒売り場やお菓子コーナーなどで売られている。イカ本来のうまみと歯応え、味付けを生かして、新しいレシピを試すのも楽しいだろう。
1969年生まれ。管理栄養士として企業の社員食堂、病院や保育園に勤務。缶詰やレトルト食品を使った時短レシピのアレンジのほか、防災食アドバイザーとしても活躍。
[日本経済新聞夕刊2019年1月15日付]
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