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フィリピン人が憩う売店 ココナツジュース1杯31円

日経MJ

2019/1/7付

フィリピン南部ミンダナオ島コタバト州。民家が並ぶ幹線道路沿いにココナツジュースを販売する売店がある。価格は1杯15ペソ(約31円)から。付近ではイスラム教徒とキリスト教徒が長年対立してきたが、今では両者の憩いの場へと変わりつつある。

「いつもおなかの調子が悪いけど、これを飲むと良くなるわ」。イスラム教徒の証しであるヒジャブを頭にまとった小学校長のアムヤ・パンギラミンさん(53)はココナツジュースを満足げに飲み干した。ココナツには利尿作用を高める効果があるとされる。

現地では「ブコ」と呼ぶココナツのジュースを扱うこの売店には近所の住民が次々と立ち寄り、乾いたのどを潤していく。小さいカップは1杯15ペソで、サイズに応じて20ペソ、25ペソ、30ペソの4種類。1杯飲んでみると、果汁100%の天然の甘さが口いっぱいに広がった。

店を開いたのは10年ほど前。今では毎日180~200個のココナツを搾ってジュースをつくり、1日に約300杯を販売するという。キリスト教徒という店員のジェリサカ・カバルバンさん(46)は「ココナツは地元の特産品。皆の生活の一部になっているわ」と話す。

今では穏やかな店の周辺だが、イスラム教徒とキリスト教徒の集落が混在し、長きにわたり、土地などを巡って度々衝突。多くの死者を出してきた。100キロメートルほど離れたマラウイ市でイスラム過激派が武装蜂起した後には数百人の集団が付近を警戒中の軍部隊と交戦した。

雰囲気が変わったのは、政府がイスラム自治政府の樹立を認める法律を2018年7月に制定し、過激派との和平を前進させたからだ。19年1月には自治政府に加わる自治体を決める住民投票が行われる予定で、最近は宗教に関係なく住民同士が交流するようになった。ココナツジュースを味わう住民の姿もいわば和平の一場面。売店はこれから忙しくなりそうだ。

(マニラ=遠藤淳)

[日経MJ 2019年1月7日付]

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