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はとバスの今野博さん

はとバスの今野博さん

東京周辺を黄色いバスで観光する、はとバス(東京・大田)で販売促進・旅程管理課長を務める今野博さん(46)。利用客から届くはがき全てに目を通し、気になる点があればツアーに参加し覆面調査も行う。利用者の目線に立つことに徹底したリサーチ力は、取引先からの信頼も厚い。

はとバスでは月に1回、利用客の意見に耳を傾けようと社長以下、役員全員が集まる「はがきチェック会議」がある。耳の痛い話もあるが、率直な思いが書かれたはがきをサービス向上のための「宝の山」と位置づけ、幹部全員が目を通す。その会議に先立ち、今野さんは多いときは月500枚に上る利用者からのはがきの意見の全てに目を通す。「売り上げの数字だけでは見えないものが、浮かび上がってくる」からだ。

「パンフレットの写真と比べると食事のウニの量が少なくて残念でした」。数年前、東京観光とあわせて力を注いでいる中長距離のツアーに参加した客からのはがきの文面が目に留まった。すぐに店に足を運び、写真と同じメニューを注文してウニの量を確認。パンフレットの写真も店舗で撮り直したものに差し替えた。「はとバスのブランドを守るために、利用者も言いにくいことを声にしてくれている」と考えるからだ。

もし自分が客の立場だったらどう感じるか――。年に3回ほどは一般客を装ってツアーに参加し、実際の運行状況を確認する調査に出かけている。

◇  ◇  ◇

現場や利用者の立場を大事にする原点は、約10年前にさかのぼる。はとバスが業務委託を受ける都営バスの運行管理を担当していた際、声を荒らげる男性から電話を受けた。聞くと、1時間に数本しかないバスが時刻表よりも早く出発したという。話を聞いているうちに男性の怒りは勢いを増していった。「今からすぐに伺います。待っていてください」と告げてバス停へ向かうと、今野さんの姿を見つけた男性が「(来てくれて)ありがとう」と声をかけてくれた。それ以来、利用客にとっての満足とは何かを強く意識するようになった。

課長として70人近くを束ねる管理職になった今も「営業担当」として旅行会社を訪れる。部下には縮小傾向にある実店舗にこそ足を運ぶよう指示しており、新しい店舗ができればバスガイドと一緒に店頭に立ち、ティッシュやパンフレットを配る。各旅行会社のバス乗り場がひしめくJR新宿駅西口にも頻繁に足を運ぶ。客の誘導にあたるだけでなく、他社のツアーの利用動向や客層、どんなコースが人気なのかを感じ取る。「現場でしか感じ取れないことが必ずある」との思いからだ。

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