カジダンへの道 料理作りの習慣化 まず朝食で
パパ料理研究家 滝村雅晴氏
家族のための料理作りに挑戦というと、身構えたり、時間をかけ過ぎたりして長続きしないお父さんは少なくない。時短家事を進めてハードルを下げれば、習慣化しやすくなる。
料理は作れないと思ったり、作らないと決め込んだりしているお父さんは、心理面と技術面の2つでハードルを感じている。心理面でいえば、プラモデルやパズルと一緒と思えば料理作りは楽になる。いきなり、戦艦大和のプラモデルや1000ピースのパズルを作るのは大変だが、部品数が少なければ、設計図に従えば完成する。料理も素材が少なければレシピ通りに作るのは難しくない。家族分のインスタントラーメンにキャベツを刻んで煮込むことから始めても構わない。
技術面では実際、パーツが少ない1つの食材で作る料理から始める。食事後のデザートの準備担当として、リンゴの皮をむいて切り分けるだけでもいい。コーヒーやお茶をいれるのは女性の役割と決まっているわけではない。食事のときに今何を自分がすべきか。あれこれ考えることが、家族のために作るパパ料理の出発点となる。
仕事に忙しく家庭で過ごす余裕時間の少ないお父さんが、平日にいかに料理を作るか。習慣化するには、強引に予定に入れてしまうことだ。仕事のアポイントと同じ。長続きする上でお勧めなのは、朝食作りだ。
なにも凝ったものを作る必要はない。ご飯と味噌汁だけでも十分。前の晩に炊飯器をセットして、味噌汁もあらかじめ作っておく。朝は火にかけるだけで済む。作業をルーティンにすれば、負担感もない。味噌汁の具材は、豆腐、ネギ、油揚げ、ワカメ、タマネギなど定番がいくつかあるが、組み合わせ次第で無限になる。具材たっぷりの味噌汁にして、目玉焼きなどを付けたりすれば、時間をかけずにしっかりとした朝食ができる。
料理に目覚めると、土日など時間の余裕があるときに、もっと手のかけた料理を作りたくなる。料理を習慣化させるためには「自分が食べたい」料理を作って楽しむことから始めるのが大事。初心者にとって自分が食べたくない料理作りは長続きしない。自分が幼い時に食べた料理であってもいい。
今は、デパートやスーパーのフェアで、日本各地の郷土の素材が割合簡単に手に入る。例えばネギ。京都なら九条ネギ、群馬であれば下仁田ネギを買ってみる。調味料に赤味噌や白味噌を使ってもいい。ストーリー性も生まれ食卓を囲む時間がより楽しくなる。
こうして始め、次に「妻は何が食べたいだろうか」「子どもが喜びそうなものは何か」とメニューを広げていく。パパ料理を言い換えれば「思いやり料理」。楽しい食卓を囲む時間を創出するという目的が明確になれば、時短家事を工夫する動機付けにもなる。もうすぐお正月。私は両親から教わった京都の白味噌丸餅の雑煮を作るのを、今から楽しみにしている。
京都府出身、48歳。1993年立命館大学卒業後、採用PR会社を経てデジタルハリウッド入社。09年パパ料理普及を進めるビストロパパ設立。農林水産省食育推進会議専門委員、大正大学客員教授。
[日本経済新聞夕刊2018年12月25日付]
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