8分煮ればOK 煮こみ料理で寒く忙しい年末乗り切る
暮れの忙しい時期に助かるのが煮込み料理。材料を重ねて鍋に入れ、8分間煮るだけで完成する。簡単でおいしい煮込み料理のルールを覚えよう。
じっくり時間をかけた煮込み料理は何よりのごちそう。でも、平日夜や忙しい日は諦めてしまう人もいるのでは。
ところが、煮込む時間が8分程でおいしく仕上がる煮込み料理のルールがある。教わったのは料理研究家・管理栄養士の近藤幸子さんだ。「2人の子どもを育てていて日々の夕食の支度は大変。少ない手数で仕上がり、おいしくするにはと試行錯誤を繰り返した」(近藤さん)という。
「ルール」に従い材料を順に鍋に入れ、強めの中火で加熱。湯気が上がったら蓋をして中火で8分間煮るだけ。簡単で栄養のバランスもとれる。
3タイプ食材に シンプル味付け
このルールでは、白菜やジャガイモなどの甘みをもつ「甘み食材」や、トマトやショウガなど風味のある「香り食材」、肉や魚、豆腐などタンパク質主体の「うまみ食材」の3タイプの食材と1、2種類の調味料を組み合わせる。2人分でうまみ食材200グラムに対し、塩なら小さじ2分の1に相当する塩分(しょうゆやみそなら大さじ1)を目安に加える。
例えば「鶏肉と白菜のレモンクリーム煮」。甘み食材の白菜、香り食材のレモン、うまみ食材の鶏もも肉を使う。「タイプの違う食材を組み合わせて加熱することで食材同士が鍋の中でうまみを引き立てあい、短時間でもおいしくなる」(近藤さん)
甘み食材や香り食材などタイプ別に選ぶというポイントを押さえ、白菜がなければキャベツやカブ、牛肉がなければ豚肉や魚、豆腐など、別の食材に置き換えればいい。
とはいえ、レシピを見て不思議に思う人もいるかもしれない。通常の煮込み料理にはしょうゆや砂糖、酒、みりんなど基本の調味料を3、4種類入れることが多い。しかも、たった8分煮込むだけでおいしい料理になるのか、と。
おいしく仕上がる理由はある。ルールに挙げている調味料の塩やしょうゆ、オイスターソースは、素材に味がしみこみやすい。特に紹介したレシピ3つのうち2つに使っているしょうゆは、調味料を味がしみにくい順に加えていく「さしすせそ」では4番目。
キッコーマンのコーポレートコミュニケーション部によると、「しょうゆは加熱の過程で素材の糖分と反応し、香ばしい香りやコクを出す」。短時間調理で調理を完成させてくれる調味料の代表だ。
煮込む前に、ルールにある調味料で肉や魚、豆腐にしっかりと下味をつけてから、火にかけるのがコツ。近藤さんは「短時間の調理でも味がしみこみやすく、味にメリハリがつく」と説明する。
素材別に楽しめ 好みでチーズも
一般に長時間煮込むとやわらかくて食べやすくなるが、調味料と素材の味が一体化し、食感や味わいが単調になってしまいがち。「素材が持つ味や食感を楽しむには8分ぐらいがちょうどいい」と近藤さん。好みもあるが、イモ類やレンコン、ゴボウなど火が通りにくい食材が心配なら、あらかじめ電子レンジで3分ほど加熱しておくのも手だ。
この8分煮込みはシンプルだが、食べる直前のひと工夫で味の印象をがらりと変えるアレンジもできる。近藤さんは、香りのよいオイルやチーズなどを加えることがある。
煮込み料理の仕上げにかけるオイルは「素材に香りをプラスしコクを与えるだけでなく、全体の味わいをまとめる役割がある」。食用オイル専門店「金田油店」(東京・台東)の青木絵麻さんは説明する。
例えば、「牛肉とさつまいもの赤ワインすき煮」は、仕上がりにバターを落としてみよう。コクが出て、ワインとの相性がよくなり、華やいだ日のごちそうに。「豚肉とキャベツ、トマトの白ワイン蒸し」には火を止めた後でカマンベールチーズをちぎってのせ、しばらく蒸らすとチーズがとろけてコクが増し、おもてなしの一品に。「意外かもしれないが、おすすめはゴマ油。香ばしい香りも加わって味わいが変わる」と近藤さん。
「8分煮込み」は使う調理道具が少なく、台所も汚れないので、後片付けも楽。忙しい日々こそ、温かい湯気に包まれた、栄養たっぷりの煮込み料理で乗り切りたい。
(フードライター 糸田 麻里子)
[NIKKEIプラス1 2018年12月22日付]
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