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飽きのこない甘さ、今なお進化中 福島・郡山の和菓子

2018/12/13付 日本経済新聞 夕刊

柏屋の飽きの来ない甘さの「薄皮饅頭」は日本三大まんじゅうに数えられる

福島県の真ん中にある郡山市は江戸時代には奥州街道の宿場町としてにぎわった。宿での一服やお土産向けに、たくさんの和菓子が生まれ、今でも銘菓がしのぎを削る。旅人に親しまれてきた郡山の和菓子は、誰でも気軽に楽しめる親しみやすさが特長だ。

柏屋の郡山駅ビルの店舗では「薄皮饅頭」づくりの実演を見られる

あっさりとした甘さのあんを柔らかい茶色の皮で包み込んだ柏屋の「薄皮饅頭(まんじゅう)」。どこにでもありそうに見えるが、口当たりと飽きの来ない甘さへの評価は高く、日本三大まんじゅうに数えられる。毎年3千万個以上売れる福島県のおみやげの定番だ。

柏屋が創業したのは江戸時代末期の1852年で、160年以上の歴史がある。歴代の社長は皆、本名善兵衛を名のり、現社長(63)は五代目だ。柏屋はもともと宿屋だったが、旅人に出すあんのたっぷり入ったまんじゅうが評判になりお菓子が本業になったという。

「のれんは守るものではなく塗り替えるもの」。本名社長はこんな家訓を紹介してくれた。甘さ、食感、大きさなど時代に合っているか常に考え、見直しているという。「戦中戦後の食糧難の時代と今では求められるおいしさが同じはずがありません」

薄茶色の色合いも戦後に黒糖を使うようになってからのもので、それまでは白いまんじゅうだったという。夏と冬では甘さを少し変え、毎年12月には取れたての新物小豆を使ったまんじゅうのキャンペーンを実施する。

もちもちとした食感の大黒屋の「くるみゆべし」

もち米に砂糖を混ぜて柔らかく蒸し上げる「ゆべし」は、西日本ではユズを入れ、東北ではクルミを使うことが多い。郡山はおいしいゆべしの店が集まることで知られる。

創業100年以上の大黒屋の「くるみゆべし」はお菓子のオリンピックと呼ばれる全国菓子大博覧会で最高賞の名誉総裁賞を受賞した。阿部充正社長(58)が目指してきたのは「みんなで食べるとその場の雰囲気が明るくなるようなおいしさ」。

クルミの大きさはもちろんどの部分にどの程度の間隔で入っているか、そしてそのクルミに砂糖の甘みがどの程度移っているのがよいか、工夫を重ねているという。

郡山駅のおみやげ館などで人気を集めるのが、かんのやの「家伝ゆべし」。鶴が羽を広げた姿を模したという三ツ矢のような形が特徴で中にはクルミではなくあんが包まれている。

戦後に甘酒と和菓子でスタートした三万石はミルクをたっぷり使った洋菓子の「ままどおる」がヒットして洋菓子が柱になった。

おいしいお店が多いだけに各社は工夫が必要になる。それがさらに消費者を引き付ける循環を生んでいるようだ。

<マメ知識>安積疏水が評判広げる
長年水不足に悩んだ郡山は1882年に猪苗代湖から水を引く安積疏水(あさかそすい)が開削されたことで穀倉地帯に生まれ変わった。お菓子業界は米などの豊かな原料と新鮮な水の恵みを受けた。疎水を利用した水力発電が新しい産業を生み、全国から人が集まり、郡山のお菓子の評判を広げていった。
2016年に安積疏水にまつわるストーリー「一本の水路」が文化庁の日本遺産に選ばれた。郡山市や猪苗代町などは優れたお菓子にブランド認証を与え、その普及を後押ししている。

(郡山支局長 村田和彦)

[日本経済新聞夕刊2018年12月13日付]

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