「口から生まれた人間」 プロとぶつかり経営磨く
プロントコーポレーション社長 竹村典彦氏(上)
カフェ&バー「プロント」の店舗(松山市)
飲食店開発を手掛けるプロントコーポレーションの竹村典彦社長(59)のスタートはサントリーの営業だった。
「君は口から生まれたような人間だ」と配属された営業部では言われました。都会へのあこがれと裏腹に東京の下町で酒販店を駆け回る毎日でした。週末には個人的に流行の店を訪れ、どんな店が人気なのか、本業と関係ない報告書を提出し続けました。これがきっかけで飲食店向け営業に異動することになります。
飲食店の販路を開拓した手腕を買われ、自社の飲食事業に携わるようになる。
たけむら・のりひこ 1981年同志社大法卒、サントリー入社。91年ミュープランニングアンドオペレーターズ設立。05年から現職。奈良県出身。
入社7年目、サントリーがビアホールを開くことになりました。後に「プレミアムモルツ」となる新商品を打ち出すための店です。バブルまっただ中、大型物件が見つからず、自社ビル1階に入っていたレストランを改装することになります。手を挙げましたが、自社ビルでやる以上、失敗は許されません。
チームに集まったコックなどはその道のプロ。メニューを決めるにも衝突ばかりです。経験が浅い分、体を動かすしかありません。目新しい料理を探しに南米にも飛びました。地中海料理を基本にした新店の輪郭が見える頃には徐々に協力を得られるようになりました。
当時のサントリー会長、佐治敬三氏から高級フレンチの総支配人に任命される。
「ル・マエストロ・ポール・ボキューズ・トーキョー」はフランスに本店を持つ三つ星レストランです。1990年ごろの料金で1食3万円はかかる高級店でした。「品質は高く、もうかるようにせいや」。経営の引き締めが佐治会長から与えられた宿題です。