ベトナム人は毎日食べる 本場の屋台フォーは150円
ベトナムを代表する料理と言えば米粉麺「フォー」だ。日本でいえば、きしめんのような麺を使ったさっぱりした透明のスープで、レストランから屋台まで手ごろな価格で食べられる。
首都、ハノイの観光名所、ホアンキエム湖の南側に面したフォー専門店「フォー・オン・フン」。昼時に訪れるとベトナム人や外国からの観光客でごった返していた。1番人気の様々な部位の牛肉が入った「フォーボー」は一杯5万5千ドン(約280円)。揚げパン「クアイ(1個)」(3千ドン、約15円)を注文してフォーに浸して食べる人も多い。週末には一日400杯以上も売れるという。
注文したフォーが出てきたら、もやしやタマネギ、香草などを自分の好みに合わせてのせるのが南部の商業都市、ホーチミン流。ハノイがある北部はそのまま食べるのが一般的。レモンを少し入れるとさっぱりした味になる。味付けも地域ごとに違い北部は薄味で、南部は少し甘いのが特徴という。
専門店で出会った女医のズォン・ティ・ハインさん(33)は「これからの寒い季節にはバイクに乗った後に熱いフォーで体を温めます。平日はほぼ毎日食べてますね」と教えてくれた。点在する屋台のフォーはさらに安く、1杯3万ドン(約150円)で提供するところもある。
フォーの起源ははっきりしていないが、20世紀初頭のハノイ市近郊のナムディン省が発祥とされる。その後北部からベトナム全土に広まり、1960年代から70年代にかけておきたベトナム戦争時に母国を追われた難民により世界中に広まった。
ベトナムは隣国の中国やカンボジア、旧宗主国のフランスなどの影響を受けながら独自の食文化を発展させてきた。野菜や肉などを挟んだサンドイッチ「バインミー」や、つけ麺「ブンチャー」なども他国の特色を吸収して誕生している。ベトナム料理は世界の歴史そのものといえそうだ。
(ハノイ=大西智也)
[日経MJ 2018年12月9日付]
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