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映画『来る』 性格不明の強大な魔物

2018/12/7付 日本経済新聞 夕刊

「告白」(2010年)、「渇き。」(14年)の中島哲也監督の4年ぶりの新作。日本ホラー小説大賞を受賞した澤村伊智の「ぼぎわんが、来る」を監督自身の脚本で映画化した。はなやかなキャストのホラー大作。

東京・有楽町のTOHOシネマズ日比谷ほかで公開(C)2018「来る」製作委員会

田原秀樹(妻夫木聡)の幼時の記憶から開幕。女の子が、裏山に消える。「あんたのところへも、あれは来るよ。あんたは嘘つきだから」と言いのこして。

バケモノなのか祟(たた)り神なのか、数年まえから田原の周辺には超常現象的な恐ろしいことがおこっていた。香奈(黒木華)と結婚し、むすめの知紗が生まれてから、それがはげしくなる。新居のなかにも来るのだ。

田原は、同級生の民俗学者、津田(青木崇高)に相談し、オカルト関係のライター、野崎(岡田准一)と沖縄のユタ(霊媒)の血をひく比嘉真琴(小松菜奈)の協力をえて対処する。だが、敵はあまりに強大だ。

得体の知れない魔物の能力が、さまざまなかたちでしめされ、一方で、田原の「嘘」や人間関係の裏がわがあばかれる。中島監督ならではの映像テクニックとも相まって、アクション映画のように快調な展開だ。豪華キャストもそれぞれキャラが立っている。

ただ、肝腎(かんじん)のバケモノのキャラが立っていないように思う。あまりにスーパーな性能にしてしまったせいではないか。

霊能者の大トリとして、真琴の姉、琴子(松たか子)が登場。ブラック・ジャックみたいなキャラの彼女が、日本中の霊能者、神官、修験者、仏僧、等々をあつめてお祓い大会をするのは、原作にはない趣向で、映像的には大変おもしろい見ものだが、これもバケモノのスーパーさを印象づける反面、固有の性格をますますわからなくしている。

得体の知れないなかにもそのバケモノ固有の論理が感じられるほうが、恐怖はつよくせまるのでは。2時間14分。

★★★

(映画評論家 宇田川幸洋)

[日本経済新聞夕刊2018年12月7日付]

★★★★★ 今年有数の傑作
★★★★☆ 見逃せない
★★★☆☆ 見応えあり
★★☆☆☆ それなりに楽しめる
★☆☆☆☆ 話題作だけど…

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