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映画『エリック・クラプトン/12小節の人生』

2018/11/30付 日本経済新聞 夕刊

「いとしのレイラ」「アイ・ショット・ザ・シェリフ」などの名曲で知られ、その傑出したギター演奏で「ギターの神様」と称されるエリック・クラプトン。今なお活躍する彼の人生を綴(つづ)った音楽ドキュメンタリーである。

東京・有楽町のTOHOシネマズ シャンテほかで公開中(C)David Wedgebury

副題の「12小節」とはブルースの基本単位であり、クラプトンの音楽はブルースへの熱い想(おも)いに貫かれていることで知られる。実際、映画はブルースの巨匠B・B・キングの死を悼むクラプトンの姿から始まり、彼の人生と音楽を重ねて描き出していく。

クラプトンは1945年にイギリスで生まれるが、母親に捨てられ祖父母に育てられる。この複雑な家庭環境がその後の彼の人生に影を落とすが、内気な少年時代にブルース・ギターにのめり込み、独学でギター演奏の腕を磨いていく。

63年にバンド「ヤードバーズ」にギタリストとして迎えられてから、クラプトンの名は知れわたるようになる。当時はビートルズなど新しい音楽が一斉に登場した時代。そんな中、クラプトンはブルースに固執しバンドを転々とする。

一方、私生活では多くの女性を遍歴。特に友人のジョージ・ハリスンの妻への熱い想いは有名。また失恋や友人の死からドラッグやアルコールに溺れ、やがて復活を遂げるが、今度は幼い愛息の死という痛ましい悲劇に見舞われる。

そんなクラプトンの波瀾(はらん)に富んだ人生を、映画は現存する映像と音のアーカイブ資料を駆使して構成している。個人的な秘蔵映像を含めた貴重な映像資料に本人の言葉を重ねることで、クラプトン自身の姿が鮮やかに蘇(よみがえ)って面白い。

リリ・フィニー・ザナック監督は「コクーン」などの製作者で知られるが、映像と音の記録資料を巧みに活用し、伝記映画とは一味違ったクラプトンの音楽人生を浮き彫りにしている。2時間15分。

★★★★

(映画評論家 村山匡一郎)

[日本経済新聞夕刊2018年11月30日付]

★★★★★ 今年有数の傑作
★★★★☆ 見逃せない
★★★☆☆ 見応えあり
★★☆☆☆ それなりに楽しめる
★☆☆☆☆ 話題作だけど…

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