ゲーム依存は病気 WHO認定、医療機関に患者の列

スペインの研究チームの論文データベースの調査では、オンラインゲームを含むビデオゲームに関する論文は1990年代には年間15本前後だったが、2015年は350本を超えた。脳神経との関連を論じたものは計116本で、大部分は脳機能の変化を分析する内容だった。

脳機能は機能的MRI(fMRI)で血流変化などをもとに検査できる。衝動の制御を担う脳の前頭前野と呼ばれる部分の機能低下と、ゲーム障害になるリスクとのかかわりが明らかになってきた。ただ、脳の状態からゲーム障害かどうかを判定できるほどには関係性を解明できていない。

「継続治療」重要に

ゲーム障害が疑われる場合、まず米国の精神科医が90年代に考案した「インターネット依存度テスト」を実施することが多い。患者が20項目中、当てはまるものをチェックし、70点以上だと依存と判定する。点数は低めに出る傾向があり、結果はあくまで参考にするだけだ。

治療の際は患者をゲームから遠ざけ、運動、食事、会話、カウンセリングなどを組み合わせる。久里浜医療センターでは泊まりがけのキャンプもある。イライラが激しく暴力を振るう患者などは入院を勧める。何より「治療の継続が重要」と樋口院長は指摘する。

他の精神疾患がないかの見極めも大切だ。久里浜医療センターをネット依存などで受診する患者の2割程度は、注意欠陥多動性障害(ADHD)の症状もみられる。ゲーム障害の治療薬はないが、ADHDを薬で治療するうちに「キレやすい」といった問題が減る場合もあり、注目されている。

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国際分類、30年ぶり改訂 研究や患者理解後押し

国際疾病分類(ICD)は、世界保健機関(WHO)が定めた病気や症状の定義や分類だ。世界共通の表記法を使うことにより正確な統計データが集まり、各国の状況把握や国際比較に役立つ。ICD―11は2019年5月の世界保健総会に提出され、承認されれば運用が始まる。

現行のICD―10は1990年に決まったもので、今回の改訂は約30年ぶり。WHO加盟国が国内統計などを完全にICD―11に切り替えるには、10年以上かかる見通しだ。

ゲーム障害はこれまでも医療現場で認識されていたが、ICDに正式に取り入れられれば病気として診断する根拠が明確になる。治療研究を後押しするほか、患者にとっても「病気だから学校や仕事を休んで治療に専念する」と言いやすくなる利点がある。

精神疾患の種類が増えることは、新市場を探す製薬企業を喜ばせるだけだという批判もある。米ゲーム業界などは規制強化を警戒、ICD―11の修正を求めている。

立命館大学の美馬達哉教授は今回の改訂が「急速に進化する機械と人間が、どう共生すべきかという問題をあらためて考えるきっかけになる」とみる。

(編集委員 安藤淳)

[日本経済新聞朝刊2018年11月26日付]

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