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パンチ工業の氏家菜美子さん

パンチ工業の氏家菜美子さん

金型部品メーカー、パンチ工業の3次元(3D)データを測定・提供する事業に携わる氏家菜美子さん(34)は、3Dスキャナーでの測定に携わりながら、営業としても活躍する。技術営業として得た豊富な専門知識を、顧客だけでなく、自社の営業マンにも「シンプルに伝える」的確なアドバイス力が武器だ。

3Dスキャナーや大量のコード、工具――。大きな荷物を抱えて氏家さんは出張測定に出向く。測定する物は、金型から美術品まで多岐にわたる。氏家さんは、パンチ工業が16年に立ち上げた3Dスキャン事業の技術営業として、自社で保有するスキャナーで顧客の依頼物をデータ化する業務を担当している。

依頼内容を疑う

技術営業は実際の測定だけでなく、見積書の作成や展示会での販売促進など、営業の業務も担当する。氏家さんが見積書を作る際に気をつけていることは「顧客の依頼内容を疑うこと」だという。3D測定は新たなサービスとして誕生したばかりで、国内ではまだ競合も少ない。同サービスを初めて利用する顧客も多く、どういったデータが必要か明確でない場合も少なくないという。

「御社の場合、CAD(コンピューターによる設計)データまでは必要ないかもしれません」。ある映像業者の見積もりで氏家さんはデータ処理内容を減らす提案をした。顧客からは当初、3段階あるデータ処理のうち、最終段階であるCAD処理まで依頼されたが、データの使用目的を聞きその必要はないと判断した。通常は3Dデータを部品の生産などに使用するが、この顧客の場合は映像として使うためだったからだ。

氏家さんによると、顧客が最終的にどんな物を作ろうとしているのか、そのために必要な最小限のデータは何か、最終製品の完成まで考えることが大切だという。見積もりが当初の半額程度になることもあるが、常に顧客が支払える金額内で収まるように考えるという誠実な営業の結果、氏家さんへの出張測定依頼が増え続けているという。

技術営業の役割は顧客だけでなく自社の社員とのコミュニケーションにかかっている。それだけに、氏家さんのモットーは「シンプルに分かりやすく伝える」こと。日々の営業活動では自社の営業職と共に顧客をまわるが、「営業マン自身に製品の知識がないと引き合いが来ない」といい、不定期に開催される社内勉強会では講師も務める。

勉強会用に資料を作成する際は「ぱっと見の分かりやすさ」に特に気を配っている。分かりにくいデータ分析は言葉での説明だけに頼らず、写真やフローチャートなどを使って理解を手助けする。製造現場で働く顧客には、ゆっくりメールを読む時間はない。営業マンがいかに分かりやすく伝えられるかが、顧客獲得を左右するのだという。

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