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香ばしく癖なし、楽しめるプチプチ食感 堺の古代米

2018/11/1付 日本経済新聞 夕刊

風遊の「ふらり弁当」。古代米と白米を混ぜて炊くと紫色に染まる

10月10日、堺市の美原区。黒姫山古墳を望む田んぼで稲刈りが始まった。収穫しているのは「古代米」。玄米の皮が黒や赤に色づくなど古代の稲の特徴を残した米で、栄養価も高い。

市民による古代米の稲刈り。奥は黒姫山古墳(堺市美原区)

美原区は農地が3割を占め、古墳などの歴史資源が多い。そこで農業と歴史を象徴する古代米をまちづくりに活用している。PRは区役所が、生産・販売は市民が担う。

10年ほど前から栽培している田守敏一さん(66)は「台風の被害もなく、今年の出来はいい」と話す。地元小学校の同級生2人と力を合わせ、若者の指導にも取り組む。

玄米の皮が黒い「さよむらさき」という品種を、白米1合に10グラム混ぜて炊くのが一般的な食べ方。全体が紫色になり、見た目は赤飯に似る。もち米なのでモチモチと粘り気があり、かむと黒い皮が破れてプチプチという食感が楽しめる。香ばしいが、味に癖はなく、おかずを選ばない。

田んぼに近い堺市立みはら歴史博物館にはミュージアムカフェ、風遊(ふらり)がある。気まぐれランチは古代米か白米を選べるが、客の9割が古代米を選ぶという。

オーナーシェフの福本千秋さん(67)は「色々なおかずに合うが、カレーとは特に相性がいい」と話す。客が持ち込んだ食材で料理をつくるなど「昭和の母の味」を心がけている。美原区にある大阪府立農芸高校が育てた牛の肉を使い、パンに古代米を混ぜた「さかい黒姫山古墳バーガー」も今月下旬に発売する。

サニーカフェの日替わりランチ。この日はごま味噌ソースのカツライス

同じ美原区のサニーカフェのランチは焼きカレーと日替わりで、ご飯は古代米のみ。日替わりのメニューは20種類用意している。

NPO法人えんが運営し、障害者の就労を支援している。約30人が在籍し、日々15人前後が働く。理事長で精神保健福祉士の大石雅さん(54)は「古代米を通じ、障害者に地域とのつながりを感じてほしい」と語る。ここで働いた経験を生かし、毎年2人前後が一般就労している。

堺市役所そばの商店街にあるCLAP(クラップ、堺市堺区)は、出産していないメス牛に限定した「伊賀牛」のステーキやハンバーグが売り物。今年5月に古代米を出し始めた。前出の田守さんに勧められたのがきっかけだ。

オーナーシェフの松尾輝由さん(62)は「おいしいし、ウチの料理にも合う」と採用を決めた。白米より10円高くしており、客の選択は半々。「自分も毎日食べているが、体調がいい」と言う。

<マメ知識>動脈硬化予防の働きも
古代米には玄米の皮の色以外にも、野毛(のげ)と呼ばれる針のような突起が長いなどの特徴があり、古代の稲と似ている。堺市美原区の黒姫山古墳は5世紀中ごろにつくられており、当時の人々も同じような米を食べていたのかもしれない。歴史に思いをはせながら味わうのも一興だろう。
「さよむらさき」には紫の色素アントシアニンが含まれており、血管を保護し、動脈硬化を予防するなどの働きがあるとされる。CLAPでは健康志向の男性が古代米を選ぶことも増えてきたという。

(堺支局長 塩田宏之)

[日本経済新聞夕刊2018年11月1日付]

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