新薬開発で社内に配慮 他社に先越され、ほぞかむ思い
帝人社長 鈴木純氏(上)
帝人の鈴木純社長
1983年に帝人入社、中央研究所に配属される。
当時はバイオテクノロジーが注目を集め、関心がありました。研究を続けるならば、大学に残るよりも資金のある民間企業の方がいいと思い、帝人に勤めていた先輩に相談し、入社を決めました。
新薬開発で悔しい思いもした。
すずき・じゅん 83年東大院修了、帝人入社。12年執行役員、13年取締役常務執行役員。14年から現職。東京都出身。
中央研究所では生物工学に携わりました。免疫系に関わる生体物質が私の課題でした。入社10年間で、今花開いている技術はほとんどかじったと思います。
腫瘍の抗体について研究していると、炎症系疾患と関係があるのではないかということがわかりました。ところが関連性を調べているうち、他社に同じ抗体を用いた治療薬の開発で先を越されてしまいました。
社内を説得するために事例を集めるより、まず新薬を造って効果があるかを試しておくべきでした。研究チームの先輩らとほぞをかむ思いをしました。
新薬開発は失敗の連続です。当社の医薬品の歴史をひもといても開発できた新薬は数製品たらず。まぐれはほとんどなく、きちんと準備して実験を繰り返すしかありません。実験を重ねるほど、自分たちは生物のごく一部分しか理解できていないことを痛感し、謙虚な気持ちになりました。