中国しょうゆ122円 安さゆえ食品偽装も社会問題に
中華料理に最も使われる調味料といえば、しょうゆだ。年間消費量は調味料全体の4割強を占め、2位の酢に倍以上の差をつける。庶民の必須アイテムだけに、価格は売れ筋で500ミリリットル7.5元(約122円)と割安だ。ただ安さゆえか、中国では現在、"偽しょうゆ"が問題となっている。
発端となったのは、江蘇省の消費者権益保護委員会が発表した調査内容だ。スーパーなどで売られている120品のしょうゆの成分を調べたところ、約24%にあたる29品で、表示内容や実際の栄養成分が基準にそぐわないことが明らかになった。このうち、「李錦記」「淘大(アモイ)」といった中国人にはなじみのブランドも含まれていた。それだけではない。栄養成分を調べたところ、醸造の際に発生するはずのアミノ酸がほぼ含まれていない、ただの「黒い液体」も4品あった。
健康被害のリスクは少ないようだが、必需品だけに中国社会に衝撃が走った。政府はメーカーに対し、2019年末までに是正を求めており、問題のある商品は今後、「しょうゆ」を名乗ることができないという。
背景にあるのが、メーカーの乱立だ。そもそも、しょうゆは鮮度の問題から「地産地消」の商品で、日本でも地域に根ざしたメーカーが今も残る。中国にも無数のブランドが存在しており、どうしても価格競争が起きやすい。この結果、価格が低くても利益を出すため、メーカーはコスト削減に走る。
通常のメーカーは生産効率を高めたり、大量調達などで原材料費を抑えたりする。ただ、食品業界に詳しい関係者によると、一部のメーカーはしょうゆに限らず、香料やうま味調味料などを組み合わせ、似た味を作りだすそうだ。
もはや、こうした偽物話は聞き慣れてしまった。それでも、えたいの知れない液体を飲んでいたかもしれないと思うと、決してよい気分はしない。
(大連=原島大介)
[日経MJ 2018年10月29日付]
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